2025年1月1日より、ベトナムで新しい会計規定(法56/2024/QH15)が施行されます。この改正により、日系企業にとって会計業務がより効率化される可能性があります。本記事では、今回の変更点とその影響について、分かりやすく解説します。

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ベトナムにおける会計期間の統合がより柔軟に!

これまでの2015年会計法では、最初または最後の会計期間が90日未満の場合のみ統合が認められていました。この規定は特に、四半期単位の会計期間(通常92~93日)では適用が難しく、多くの企業が余計な財務諸表作成に追われる状況を引き起こしていました。

しかし、2025年1月1日施行の新規定では、以下のように変更されます。

  • 統合条件の拡大
    最初または最後の会計期間が**最大3連続月分(92日~93日)**までであれば、次の年次会計期間や前の会計期間に統合可能。

  • 統合後の期間制限
    統合後の会計期間は引き続き15か月を超えない必要があります。

項目現行規定(2015年会計法)

新規定(法56/2024/QH15)

対象となる会計期間最初または最後の年次会計期間が90日未満の場合に限り統合可能
最初または最後の年次会計期間が3連続月分(92日や93日を含む)を超えない場合に統合可能
具体的な統合条件– 次の年次会計期間に統合可能
– 前の年次会計期間に統合可能
– 統合後の期間は15か月未満である必要あり
– 次の年次会計期間に統合可能
– 前の年次会計期間に統合可能
– 統合後の期間は15か月を超えない必要あり
課題と背景– 最初または最後の会計期間が90日を少し超える(例:第2四半期や第3四半期の92日など)場合、会計期間として統合できないため、余計な財務諸表の作成が必要になる
– 実務上の柔軟性に欠ける
– 最初または最後の会計期間が3連続月分を超えなければ統合可能となり、柔軟性が向上
– 実務の効率化と不要な財務諸表作成の負担軽減が期待される
利便性の向上– 実務では統合可能な会計期間が限られている– 3連続月分まで統合可能となることで、実務上の選択肢が広がる
法的要件の明確化– 90日未満という具体的な日数制限がある
– 「3連続月分(約92日)」という基準により、日数の曖昧さが解消され、現場での適用が容易に

 

Article 12. Accounting period – Accounting Law 2015

4. In case the first or last annual accounting period is shorter than 90 days , it is allowed to be added to the next annual accounting period or added to the previous annual accounting period to calculate into one annual accounting period; the first or last annual accounting period must be shorter than 15 months.

引用元:会計法2015

4. Amend and supplement Clause 4, Article 12 as follows:

“4. In case the first or last annual accounting period does not exceed 03 consecutive monthly accounting periods, it is allowed to be added to the next annual accounting period or added to the previous annual accounting period to calculate into one annual accounting period; the first or last annual accounting period must not exceed 15 months.”.

引用元:Law No.: 56/2024/QH15

この改正により、日系企業を含む多くの企業が、会計業務の負担軽減を図れると期待されています。

変更の趣旨を深堀

少し深堀してみましょう。改正には必ず趣旨が存在するからです。いろいろ以下で書いてますけど「実務で問題あったらから柔軟にしようぜ」ということですね。

問題点カテゴリ

現行規定の問題点具体例/影響
1. 統合条件が厳しすぎる– 「90日未満」という厳しい制限
統合可能な範囲が狭く、92日以上の期間は対象外。
– 第2四半期や第3四半期(通常92日)では統合が認められず、追加で財務諸表を作成する必要がある。
– 企業の労力と時間の増加。
2. 実務の柔軟性に欠ける– 四半期または特殊な会計期間に対応できない
最初または最後の会計期間が四半期途中に当たる場合、柔軟な対応ができない。
– 特例規定が欠如し、特殊な状況に対応不可。
– 例:新設企業が四半期途中で設立された場合、92日を超えると統合不可となり、余計な書類作成が必要。
– 事業再編(分割・合併など)時に柔軟な対応が難しい。
3. 法規制と実務の乖離– 規制が現実と一致していない
「90日未満」という制約は、92~93日の典型的な四半期会計期間に対応していない。
– 国際基準との整合性に欠ける。
– 規制遵守のために企業が不要な書類や業務を行わざるを得ない。
– 外資系企業がベトナムの規制に適応する際の負担増。
4. 企業の負担増大– 余計な財務諸表作成が必要
統合が認められない場合、短期間の会計報告を別途作成しなければならない。
– 管理業務が煩雑化。
– 小規模事業者にとっては特に大きな負担。
– コストとリソースの浪費。

いい改正だと思います。

まとめ

2025年から施行される会計期間の統合規定は、日系企業にとって非常に実務的でメリットの多い変更です。柔軟な運用が可能になり、業務効率化とコスト削減が期待されます。この改正を機に、会計フローを見直し、より良い運営体制を構築しましょう