今回は今話題となっているホンダ・日産、統合協議打ち切りの話題。

日本を代表する企業ですし、国力とも関わってくるのでみなさんも気になるところですよね。そこで会計とか経営マネジメントという視点でいくつか分析していきたいと思います。

だいぶスケールの大きなお話ではありますが「抽象化」して整理すれば私たちとのベトナムでの経営とも関連してくるんです。

比較(SNSによるルッキズムとか)はメンタルによくないというのはあるのですがビジネスではやっぱり比較分析することでわかってくることもあるんで大事なんですよね。

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まず基本的な財務状況を比較してみたいと思います。

情報は以下のウェブサイトから引用させて頂きました。ザイマニさんです。とても有用なサイトだと思いますので株式投資や財務分析に興味のある人はぜひ!

https://zaimani.com/

損益計算書と貸借対照表を比較してみよう!

引用元:ザイマニ

2023年度(2023年3月末)の数値を使いました。2024年に日産の利益が減少したので本来はその数値を使うべきですがこの記事での論点はHONDAとの比較分析ですので問題ないと判断しました。

指標日産HONDA
売上約10兆円約16.9兆円
営業利益377,109百万円1.6兆円
営業利益率3.6%9,8%
流動資産約11兆円約9.5兆円
流動比率167%144%
固定資産約6.2兆円約15兆円
純資産約5.6兆円約11兆円
自己資本率31.9%46.6%

※営業利益には研究開発費が含まれていないかと思います。

金額の桁がやっぱりすごいです。億じゃなくて兆。

気になるところを分析してみましょう。まずP/Lですが、売上規模も収益性もHONDAのほうが優れていると言えます。得に稼ぐ力である営業利益は4倍くらいの差があります。以下のリンクから大事な経営分析指標についてもまとめています。

>>【財務分析解説】知らないと損する!収益性とは?2つの視点と7つの具体的な指標を理解する方法

ビジネスモデルの違いもわかりますね。HONDAは二輪もありますし、金融サービスの売上も大きいということがわかります。

ただ安全性を分析してみると?

日産の経営危機というニュース出だしから資産のほうもちょっとやばいのかなと思った人もいるでしょう。ただ、流動資産(お金とかお金になりやすい資産)の金額は、日産のほうが大きいのです。流動比率も高い。なので生きるか?死ぬか?といった意味で見ると日産のようが安全だという考え方もできます。もちろん、毎月の固定のキャッシュ費用なども関連してくるので一概には言えません。

固定資産の金額がだいぶ違う?

上記の表によれば日産が約6.2兆円に対してHONDAは約15兆円です。本来は投資有価証券などの金融資産やリース資産なども細かにみなければいけませんが、ここから読み取れることとしては「投資額」はHONDAのほうが大きいというわけです。将来お金を生み出す「資産」が大きいということなのでこの点はHONDAのほうが優れていると評価できると思います。

以下の図もわかりやすいので添付しておきますね。

引用元:ザイマニ

ホンダ・日産と役員の数を比較してみる

つづいて両者の両者の役員の数を見てみましょう。これもニュースで話題になっていますよね。

引用元:有価証券報告書
指標日産HONDA
役員

15人(男性11人、女性4人)

21人(男性21人、女性3人)
女性比率27%13%
外国人の数6名
執行役及び執行役員の数合計52名(日本人35人、外国人17人)上記に含まれる
社会取締役8名6名

上記は有価証券報告書の情報をもとに作成したものです。実際に各社のウェブサイトを見ると報告書に基づいた役員の数がいることがわかります。

https://www.nissan-global.com/JP/COMPANY/PROFILE/EXECUTIVE/

https://global.honda/jp/guide/management/

ここで一番気になるのはやっぱり日産の役員(執行役を含めた)の数の多さでしょう。HONDAの倍以上存在します。そうすると迅速な意思決定が遅れてしまうのかな?というのが感覚的にもわかるかと思います。

売上がHONDAの60%強の日産の役員の数(執行役含む)が倍以上というのはやっぱり多いかなと思ってしまいます。

もしあなたのベトナムの会社でこれまで責任を持って意思決定できたのにいきなり、本社からメイン銀行の出向者が3人くらいきて「これからは合議制で決めてください!」と言われたら「うっ」となってしまいますよね。そんな感覚に似ていると思います。

一人当たりで分析してみよう!

続いて一人当たりで分析してみましょう。これもザイマニさんのデータを引用しました。

引用元:ザイマニ
指標日産HONDA
一人当たりの売上高80百万円86百万円
一人当たりの営業利益2.9百万円8.4百万円
従業員の数131,719人197,039人

平均給与

8.5百万円8.2百万円
平均勤続年数16.4年22年

一人当たりの売上高はそこまで変わりませんね。ただやっぱり一人当たりの営業利益で見るとだいぶ違いますね。このデータは2023年3月期ですから、2025年3月期はもっと差がでているでしょう。あと気になったのは平均勤続年数の違いです。これは以下の「カルチャー」と関連してくるのかなとも思っています。

会社の内紛? 新車モデルがでないのは社内政治で忙しいから?

ここからはデータというかカルチャーのお話です。

日産のことをいろいろと調べると以下のキーワードがやっぱり気になるんですよね。それは…。

  • 激しい権力闘争
  • 社内抗争
  • 内紛

です。言い換えれば「出世」のために有限の時間を投資している人が多いかもしれないということです。つまり本来は「いい自動車を世の中に出す」のが目的なのに「権力を取る」のが目的になってしまっているかもしれないというのが示唆されています。以下のリンクで「社内カルチャー」「権力争い」が会社へどのように影響を与えるか?を記事しています。

>>ベトナムの社長の仕事は会社から「がん細胞」を除くことです

1970年代後半から1980年代初頭には、激しい権力争いが行われていたそうです。その流れが現代までつづいていそうです。

もしあなたの会社で役員同士の引きずり下ろしのためのアクションが頻繁に行われていたら会社の本質を忘れてしまいそうですよね。これも感覚的にわかると思います。日産のコーポレートパーパスは以下です。

「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける」

とてもかっこいいパーパスですね。

激しい権力争いという環境では、このパーパスが達成することは難しい!と思ってしまいますよね。

なおHONDAのビジョンは以下のようです。かっこいいです。

すべての人に、「生活の可能性が拡がる喜び」を提供するー 世界中の一人ひとりの「移動」と「暮らし」の進化をリードする ー

 

本田宗一郎の理念と引き継がれるカルチャー

日産とHONDAが経営統合されるとニュースを見て、微妙だなと思った人も多くいるようです。おそらくそれはカルチャーの違いです。

HONDAは独自のカルチャーがありますよね。それは創業者の本田宗一郎から引き継がれたスピリッツにあるんだと思います。 なかでも以下のストーリーはそれを象徴しているんだと思います。

社長を退任した本田は約2年の歳月をかけて日本国内の工場や出張所、海外の駐在所などすべてを回って社員の日頃の苦労をねぎらったんだそうです。こうした社員一人ひとりの努力があったからこそHONDAが世界的企業となったことを、よく理解してそれをきちんと行動で示したのです。なんと素晴らしいことでしょう。2年もかけてすべてまわったんだとか。

あるとき、宗一郎さんが従業員と握手を交わそうとしたところ、油まみれの手に気づいた従業員が、手を引っ込めてしまったことがあったんだそうです。申し訳なく思ったんでしょう。そのとき本田宗一郎氏は、

「いや、いいんだよ、その油まみれの手がいいんだ。」

と言って、しっかりとその従業員の手を握り、自分の手に付いた油のにおいをクンクンと嗅いだんだとか。感動しますよね。

日産のことをすべてわかるわけでなく素晴らしい人もいるとは思うのですがどうしても

  • 権力争いに忙しい

会社とは違うなあと思ってしまう人も多くいると思います。

ちなみに本田宗一郎氏は、

戦争が終わったとき、「軍が威張りくさる時代が終わってよかったな」と漏らしていたそうです。宗一郎さんは、権力と統制が大嫌いでした。

こういうスピリッツが引き継がれているのかもしれません。あとHONDAで有名なのは「そろばん」部分の藤沢武夫さんがいたからこそビジネスとして成長したといった点です。「ロマン」も大事ですが「そろばん」(会計)も大事です。

 

役員報酬の比較

こういったカルチャーは数値に現れるかもしれません。それが役員報酬です。

日産のほうが相対的に高いです。これももしかしたらそうしたカルチャーからくるのかもしれません。

ただ日本の経営者の役員報酬は世界と比べて低いと言われてもいるのでそのあたりはきちんと考えるべきだとは思います。

まとめ

日産とHONDAの経営統合の白紙になったことについて数値とカルチャーという部分で分析してみました。

私たちベトナムの経営者に転用するとすれば、

  • 財務分析は大事
  • 意思決定に関わる人を増やしてもよくない
  • 社内政治で権力闘争は組織を弱体化させる

です。お役にたてれば幸いです。