こんにちはラボの菅野です。

ベトナムで働いていると、「個人所得税(PIT)の確定申告って、会社にやってもらえるの?」という疑問を持つことがあるかもしれません。

結論からいうと、確定申告を会社に任せられるケースと、自分で行わなければならないケースがあります。

確定申告は、書類を準備したり、税務署に行ったりと手間がかかるため、「できれば会社に任せたい」という人も多いはず。そこで今回は、どんな人が会社に確定申告を委任できるのかを整理して解説していきます。

例えばスタッフさんが年度の途中で会社を変えたとか…。駐在事務所から本社を設立して転籍など。そんな場合ありますよね。

>>【ベトナム税務講座】ベトナム個人所得税の申告・支払い方法について解説、どこに?どのように?をわかりやすく整理【申告書の種類の整理】

ベトナムの個人所得税の確定申告の委任とは?

確定申告の委任とは、会社が従業員の代わりに個人所得税(PIT)の確定申告を行い、納付まで代行してくれる仕組みです。フォームの名前でいうと05/KK-TNCNです。日本で言うと源泉所得のことです。会社が源泉して申告してくれます。ただ、すべての人が会社に任せられるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。

そもそも確定申告が必要なのは、以下のような人です。

  • 年間の所得が一定額を超える場合
  • 複数の雇用先や副業収入がある場合
  • 税務署に対して過不足を調整する必要がある場合

ただし、これに当てはまる人でも、条件を満たせば会社に申告を委任できます。では、どのような条件があるのでしょうか?

個人所得税の確定申告を会社に委任できる条件

確定申告を会社に任せるためには、以下の3つの条件をすべて満たしている必要があります。

  1. 会社が確定申告を行う時点で、まだ在籍していること
  2. 3か月以上の労働契約を結んでいること
  3. 他の収入がない、または一定の条件を満たしていること

これらの条件を一つずつ詳しく見ていきます。

ステップ1:確定申告のタイミングで会社に在籍しているか?

まず最初に確認するのは、会社が確定申告を行う時点(通常3~4月頃)に勤務しているかどうかです。あたりまですかね。

在籍している → ステップ2へ進む
すでに退職している → 委任不可!自分で確定申告が必要

例:
3月末で退職 → 4月の確定申告時に在籍していないため、自分で申告する必要あり
4月以降も勤務継続 → 次のステップへ進む

関連条文:
政令126/2020/ND-CP 第8条第6項d.2

「居住者が確定申告を委任するためには、3か月以上の労働契約を締結し、会社が確定申告を行う時点で勤務している必要がある。」

ステップ2:3か月以上の労働契約を結んでいるか?

次に確認するのは、現在の会社と3か月以上の労働契約(HĐLĐ)を結んでいるかどうかです。

3か月以上の契約がある → ステップ3へ進む
契約が3か月未満 → 委任不可!自分で確定申告が必要

例:
1か月契約のアルバイト → 確定申告は会社に委任できない
6か月契約の正社員 → 次のステップへ進む

ステップ3:他に収入はあるか?(ここが少しややこしい)

最後に、その会社以外に収入があるかを確認しましょう。収入がある場合、以下の条件を満たしていれば会社に委任できます。ベトナムは副業が結構あたりまえですし、駐在事務所から本社などのケースもありますね。

✅ 副業なし → 委任OK!会社に確定申告を任せられる
✅ 副業があっても以下の条件を満たす → 委任OK!

  • 副業が「3か月以上の労働契約」に基づくものではない。逆に「3か月以上の労働契約」であれば委任できない。
  • 一時的な収入(月平均1000万VND以下)で、すでに10%の源泉徴収が済んでいる

副業収入が以下に該当する場合 → 委任不可!自分で確定申告が必要

  • 副業(他の会社での勤務)が「3か月以上の労働契約」に基づくもの
  • 月平均1000万VNDを超える一時的な収入があり、個人所得税が未納(源泉してない)

例:
・副業なし → 会社に委任OK!
・フリーランスで毎月1500万VNDの収入 → 確定申告は自分で行う必要あり
・月500万VNDの副業があり、税が引かれている → 会社に委任OK!

他の収入に対する個人所得税(TNCN)はすでに源泉徴収されているか?これがされていない場合は「委任」できません。

このステップ3は以下の3つに細分化されます。

  • 他の収入が「3か月以上の労働契約」に基づくものか?
  • 他の収入(臨時収入)は月平均1000万VND以上か?
  • 他の収入に対する個人所得税(TNCN)はすでに源泉徴収されているか?

まとめ:3つのステップをクリアしたら会社に確定申告を任せられる!

確定申告を会社に任せられるのは、以下の3つの条件を満たしている場合です。

✔ ステップ1:会社の確定申告のタイミングで在籍している
✔ ステップ2:3か月以上の労働契約を結んでいる
✔ ステップ3:他の収入が条件を満たしている(または収入がない)

この3つをすべてクリアしていれば、会社に確定申告を任せることができます!

一方で、どこかのステップで「×」になった場合は、自分で確定申告をする必要があります。

確定申告の時期になってから慌てないように、事前にチェックしておきましょう!

クイズ!あなたのスタッフはベトナムPITの確定申告を会社に委任できる?

ここからは、あなたの理解度をチェックするクイズです。次のケースでは、確定申告を会社に委任できるでしょうか?考えてみてください!

 

ケース1:確定申告時点(3月末)に会社に在籍していない場合

Aさんは1月から3月まで現在の会社で働き、3月末で退職する予定です。会社の確定申告は3月末までに行われます。

Cさんは1月から3月までの3か月労働契約で働いており、契約終了後に別の会社に転職予定です。会社の確定申告は3月末までに行われます。

この場合、AさんとCさんは確定申告を会社に任せることができるでしょうか?

A. 任せられる
B. 任せられない

答え:A. 任せられる
確定申告を会社に委任できるかどうかは、3月末の申告時点でその会社に在籍しているかどうかが重要です。また3ヶ月の労働契約もありますね。
AさんとCさんはどちらも3月末まで会社に勤務しているため、確定申告を会社に任せることができます。

ケース2:副業で毎月900万VNDの収入があるBさん

Bさんは会社でフルタイム勤務をしながら、副業で毎月900万VNDの収入を得ています。
この場合、Bさんは確定申告を会社に任せることができるでしょうか?

A. 任せられる
B. 任せられない

答え:A. 任せられる
副業の収入が月平均 1000万VND以下 であれば、確定申告を会社に委任することができます。副業収入に源泉徴収がされているかどうかは関係ありません


ケース3:副業で毎月1200万VNDの収入があるDさん

Dさんはフルタイムで勤務しながら、副業で毎月1200万VNDの収入を得ています。この副業収入にはすでに10%の源泉徴収がされています。副業での3ヶ月の労働契約はありません。
この場合、Dさんは確定申告を会社に任せることができるでしょうか?

A. 任せられる
B. 任せられない

答え:A. 任せられる
副業の収入が月平均 1000万VNDを超えていても、すでに10%の源泉徴収が行われている 場合は、会社に確定申告を委任することができます。

ケース4:3月末に契約更新したEさん

Eさんは現在の会社で6か月契約(1月~6月)で働いており、3月末に契約をさらに6か月延長しました。会社の確定申告は3月末までに行われます。
この場合、Eさんは確定申告を会社に任せることができるでしょうか?

A. 任せられる
B. 任せられない

答え:A. 任せられる
Eさんは3か月以上の労働契約があり、3月末時点でも会社に在籍しているため、確定申告を会社に任せることができます。

まとめ

いくつ正解できましたか?
確定申告を会社に任せられるかどうかは、3月末の申告時点での在籍状況、契約期間、他の収入の有無によって決まります。

3月末の確定申告時点で在籍していれば、委任可能
・労働契約が3か月未満の場合でも、3月末まで勤務していればOK
・副業収入が月平均1000万VND以下なら、確定申告を委任できる
月平均1000万VNDを超えていても、すでに10%の源泉徴収がされていれば確定申告の委任が可能

確定申告の時期になってから焦らないように、自分の状況をチェックしておきましょう!