こんにちは!マナラボの菅野です。
今回は、2025年5月17日にベトナムのファム・ミン・チン首相が発出した指令13/CT-TTgについて、わかりやすく解説していきます!
テーマはずばり――
「密輸・商取引詐欺・模倣品」への本気の対策、そして日系企業が無関係ではいられない理由です。
この前、ハノイのミーディンに行ったらブランドもの?が買えるお店がものすごい勢いで閉まっていました。びっくりしました。
この記事のもくじ
これはただの「取締り強化」ではない。国家レベルの“構造改革”です
2025年5月17日付で発出された首相指令13/CT-TTgは、「新たな状況下における密輸・模倣品対策の強化」という、タイトルからしてかなり強いメッセージを持つ内容。
この指令の冒頭、政府はこう述べています:
「密輸、商取引詐欺、模倣品、知的財産権侵害の状況は、広範囲かつ多様な手口で拡大し、国民の健康と信頼、そして社会の秩序・安全に悪影響を及ぼしている」
(指令13/CT-TTg 第I章)
つまり、「これは国民の健康や社会の安全に関わる国家レベルの問題だ」と明言しているわけです。
「禁止区域なし」「例外なし」──一件の違反が、全業界に波及する時代へ
この指令では、対策の基本姿勢として以下のような強い言葉が掲げられています:
「処理一件で地域全体、業界全体への警鐘となるように」「禁止区域なし、例外なし」
(同指令 第II章)
つまり、仮に「地方の店舗がたまたま仕入れた模倣品」が発覚しても、それが全国規模の調査や業界全体の風評被害につながる可能性があるということ。
この姿勢は、在ベトナムの日系企業にとっても無関係ではいられません。
企業が今すぐ見直すべき「リスク対応チェックリスト」
販売する商品の証明書類はすべて揃っていますか?
→ 「正規ルートで仕入れた」と言えても、請求書や通関書類がなければ“証明”にはなりません。ECサイトでの商品画像・広告表現、過剰ではありませんか?
→ 同指令では「虚偽広告」や「誇張表現」にも厳しい対応が求められています。サプライヤーの選定は“価格”だけで判断していませんか?
→ 出所不明の商品を仕入れた場合、罰則の対象は販売者側になることもあります。
法令の根拠は?→ 指令13/CT-TTg(2025年5月17日発出)
この指令は、**ベトナム首相指令13/CT-TTg(2025年5月17日付)**で公式に発出されたものであり、ベトナム政府公式サイトや各省庁の通達により広く周知されています。
さらに、同時期に以下の関連文書も発出されています:
- 公電65/CD-TTg(2025年5月15日)
- 公電72/CD-TTg(2025年5月24日)
- 公電82/CD-TTg(2025年6月5日)
→ いずれも「集中取締り期間(2025年5月15日〜6月15日)」における具体的な指示を含みます。
こんな事例も…「シャッターを下ろす店舗」が全国に
実際に、2025年5月下旬の集中取締りでは、**商品の正規書類を提示できない小売店舗が“検査回避のために臨時休業”**するケースも多発しました(政府公電82/CD-TTgの運用報告より)。
この動きは、「正規証憑が出せない=違反の可能性あり」という認識が現場に根付いている証拠でもあります。
🏛 各省庁への具体指示とその意味とは?
指令13/CT-TTgでは、ただ「取り締まれ!」という号令をかけて終わり…ではありません。
ベトナム政府は、各省庁や地方自治体に対して極めて具体的なタスクを割り振っています。
以下はその抜粋と、日系企業が実務で注意すべきポイントをまとめた表です👇
省庁・機関名 | 主な指示 | 実務で気をつけたいこと |
---|---|---|
公安省(Bộ Công an) | 犯罪摘発の加速、起訴・公表の徹底 | 商品が関係機関に押収された場合、公表リスクあり |
商工省(Bộ Công Thương) | EC含む市場監視・模倣品の検査 | オンライン販売事業者は特にリスク大 |
保健省(Bộ Y tế) | 偽薬・虚偽広告の取り締まり | 表現や成分効果の記載には要注意 |
財務省(Bộ Tài chính) | 輸入通関・税逃れチェック強化 | インボイス不備・虚偽申告は摘発対象に |
科学技術省 | 商品品質・知財登録の監視強化 | 自社ブランドが無断で模倣されていないか確認を |
内務省 | 業務管轄の明確化と管理責任の所在 | 指導対象に自社が含まれる可能性を常に意識 |
出典:指令13/CT-TTg(2025年5月17日)および公電82/CD-TTg(2025年6月5日)
具体的な成果(数字で見る取締り)
首相指令に基づく集中取締期間(2025年5月15日〜6月15日)において、ベトナム全国では…
- 摘発件数:10,400件以上
- 国庫納付額:約1,278億VND(約7億円)
- 刑事起訴:204件
代表的な事例:
- **ハイベー社(Hai Be社)**による数千点の衣料品の偽造加工(イエンカイン郡)
- 子ども用玩具・冷凍食品・靴などでの商標侵害も多数摘発
(出典:ニンビン新聞2025年6月23日号、国家指導委員会389報告)
なぜ日系企業も「当事者」になり得るのか?もしかしたら?
ここがこの記事の本題です。
「自分たちは正規に日本から仕入れてるから関係ない」
「うちは小規模な工場だから対象外だろう」
そう思っていませんか? でも、実際に現場では…
✅ ベトナム国内の販売先に提出する「正規仕入証憑」がない
✅ EC販売で画像だけ他社から転用、広告内容が誇張気味
✅ 知らずにグレーなローカル業者から原材料を仕入れていた
こうした“油断”が、検査対象になる→販売停止→メディア報道→本社対応という連鎖を引き起こします。
カントリーリスクとしての“模倣品汚染”
これは、単にベトナム国内だけの問題ではありません。
- ECを通じて日本や第三国へ偽商品が出回った場合
- 日系企業が模倣品の「元締め」だと誤認された場合
- 本社が日本で炎上し、CSR上の責任を問われた場合
「知らなかった」では済まされないリスクが潜んでいることを、ぜひ覚えておいてください。
まとめ:今、日系企業ができる3つのこと
仕入証憑・商品出所の確認と書類管理の徹底
→ 商品ごとに請求書・輸出入記録・認証ラベルを整理!広告・説明文・販売文言の見直し(特にEC)
→ 「効く・治る・安心」といった表現には根拠が必要!社内で「指令13/CT-TTg」や関連公電の勉強会を開催
→ 現地法人の全社員が“知らなかった”を防ぎましょう!
💬 最後にひとこと:
この指令13/CT-TTg、そして関連する集中取締りは、一過性のキャンペーンではなく、構造改革の一部だと筆者は感じています。
ベトナムに進出している日系企業の皆さんが、安心して持続的にビジネスを続けるためにも、「模倣品リスク」への備えは避けて通れないテーマです。