こんにちは!マナラボの菅野です。
「社会保険って、払わなかったらどうなるんですか?」
最近、経営者の方や人事担当の方からこんなご相談を受けることが増えてきました。
一言でいえば、「払ってないとマズいですよ」なんですが……
問題は、その「マズさ」の中身が実はめちゃくちゃ幅広いという点なんですね。
- ちょっと遅れただけでもペナルティがある
- 悪質だと刑事罰(=前科つき)まである
- しかもそのボーダーラインがあいまいだったりする
……こう聞くと、ちょっと怖くなってきますよね。でも大丈夫です。
この記事では、社会保険(+健康保険、失業保険)を制度別にやさしく、だけど正確に整理していきます。
この記事のもくじ
🎁この記事を読むとこんなことがわかります!
- うっかりの未納と、悪質な詐欺の違いがわかる
- 実際の罰金額や懲役期間が制度ごとに整理できる
- 労働者への影響、法人としてのリスク、ぜんぶ見えてくる
「これって払ってないとヤバいんですか?」っていう不安に、根拠ある形で答えを出します。
なお、もっと深い内容は以下で解説していますよ!手当を不合理に利用して社会保険を逃れるケースです。
>>🔓ベトナムにおける高額手当を利用した社会保険料逃れの事例調査(2022~2025年)
「社会保険、ちょっとくらい未納でも大丈夫でしょ」って思ってませんか?
これ、実は多くの経営者さんや実務担当者さんがぼんやり思っていることなんです。
たとえば「利益が出てないから少し後回しにしよう」とか、「従業員も了承してるし、問題にならないはず」とか。
でも……社会保険の世界では、「ちょっと」や「了承済み」が通用しないことが多いんです。
それどころか、2024年に法律が改正されて、さらに厳しくなっています。
制度別に見る!未納・回避・詐欺に対する罰則まとめ
社会保険・健康保険・失業保険ってなにが違うの?
ざっくりいうと、それぞれこんな感じです。
- 社会保険:病気・出産・年金などのベースとなる保険
- 健康保険:医療費のサポート(診察・入院など)
- 失業保険:会社を辞めたときの生活支援・職業訓練
全部セットで「社会保険」っぽく扱われることが多いですが、実際にはそれぞれ別の制度なんですね。
🚨1. 「ただの未納」は行政処分で済みます(でも重いです)
企業が単に「支払いを遅らせてしまった」「足りなかった」レベルの場合、これは行政処分になります。企業が社会保険料・失業保険料を規定どおりに支払っていないが、故意の回避ではない場合は、次のように行政罰の対象となります。日系企業で社会保険に加入していない企業はないかもですが、ローカル企業では結構あるようです。なのでDDとかの時は気をつけないといけないです。
根拠:政令12/2022/NĐ-CP 第39条
項目 | 内容 |
---|---|
根拠法令 | 政令12/2022/NĐ-CP 第39条第5項b点、第6条第1項 |
対象 | 個人・法人いずれも |
罰金(個人) | 保険料総額の12~15%(上限7,500万VND) |
罰金(法人) | 24~30%(上限1億5,000万VND)(個人の倍) |
延滞利息 | 前年の社会保険基金平均利回りの2倍または0.03%/日(遅延30日以上) |
その他 | 保険料全額の追納義務あり |
2. 悪質だと、前科がつくレベルです(刑事罰)
刑法第216条:保険料の支払い義務違反
6ヶ月以上にわたり、社会保険・健康保険・失業保険の納付義務を不履行し、かつ詐欺やその他の手段で逃れた場合、刑事責任の対象になります。つまり、支払ったように見せかけて実際は納めていない。
従業員から保険料を引いておいて、自分で使っちゃった。みたいな場合です。
これらはすべて刑法216条に違反します。
違反内容 | 罰金額 | 懲役 | 備考 |
---|---|---|---|
回避額:3,000万~3億VND または 従業員10~49人 | 5,000万~2億VND | 3ヶ月~1年 | 非拘禁矯正も選択肢あり |
回避額:3億~10億VND または 従業員50~199人 | 2億~5億VND | 6ヶ月~3年 | 常習性・組織的犯行が加味される |
回避額:10億VND以上 または 200人以上 | 5億~10億VND | 2年~7年 | 悪質・重大 |
詐欺的な行為(偽書類で給付を受けるなど)だと、懲役10年までありえます(刑法214・215条)。
📌 刑法第214~215条:保険給付における詐欺行為
- 偽造書類の作成や不正な給付受給が該当
- 最大10年の懲役刑が科される可能性あり
法人も例外ではありません。会社自体が罰金を受けます
会社(法人)が社会保険料をごまかした場合、代表者個人ではなく会社そのものが処分対象になります。
内容 | 処分 |
---|---|
社会保険の詐欺または逃れ | 罰金:2億〜30億VND(刑法216条) |
その他のリスク | 税務・許認可・表彰などに悪影響 |
未納によっていちばん困るのはあなたの従業員です
企業側としてはコスト削減のつもりでも、実は最大の被害者は従業員です。
- 健康保険証が無効になって、病院に行っても実費
- 産休手当・傷病手当が受け取れない
- 年金の支給額がガクンと減る
こうなると、会社への信頼は一気に失われてしまいます。
📋社会保険機関の調査が入るときの準備リスト
「あ、うち調査されそうかも…」という方のために、よく求められる書類はこちらです。
- 労働契約書(全員分)
- 給与支払簿、勤怠表、ボーナス一覧
- 社会保険・健康保険の登録台帳
- 社員の社会保険帳簿(コピー)
- 半期の労働者使用状況報告書
- 確定申告(法人税・個人所得税)
- 保険料支払いの証拠(銀行振込票など)
バラバラの管理になっていると対応に苦労します。NotionやGoogle Driveなどで整理しておくのもおすすめです。
よくある質問
Q. 少しだけ遅れただけなら大丈夫?
→ 30日以上の遅延で利息が発生します。
Q. 退職社員の社会保険帳簿は未納でも閉じられる?
→ 未納分があると閉じられません。企業が払うまで保留になります。
Q. 「手当」として給料を逃したら合法?
→ 毎月固定支給の手当は「実質的な賃金」とみなされることがあります(社会保険法第89条)。つまり逃れにはなりません。
さいごに:完璧じゃなくていいから、正直にやろう
もちろん、「完璧にやらなきゃ」と思うと身動きが取れなくなる気持ちもわかります。
でも、一番まずいのは、なにもしていないことがバレたときです。再度、罰金についてまとめますね。
ケース | 罰則 | 根拠法令 |
---|---|---|
正当な手続きなしで支払遅延 | 行政罰(最大15%) | 政令12/2022 第39条 |
保険料の徴収後、未納 | 刑事罰(最大7年懲役) | 刑法第216条 |
給付を偽って受け取る | 刑事罰(最大10年懲役) | 刑法第214・215条 |
制度は難しいですが、「わからないことは聞いていい」「対応の余地はある」ことを忘れないでください。
マナボックスでは、こうした社会保険のチェックや内部体制の整理もお手伝いしています。
「ちょっと不安かも…」という方、ぜひお気軽にご相談くださいね!
以上、マナラボの菅野でした!
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
またお会いしましょう〜!