昼食手当を損金+非課税で処理する新鉄則

こんにちは!マナラボの菅野です。

「昼食手当」って、どの会社でも当たり前のように支給していますよね。
でも、その中身、しっかり税務チェックされてますか?

「730,000ドンまでなら非課税だから安心」――そう思っていたら危険です。
実はそのルール、2025年、静かに終わりました。

2025年6月を境に、あの「神ルール」がなくなったんです。

この記事では、旧制度の根拠から新制度の要点、そして実務で何をすればいいかまで、すべて網羅してお伝えします。最初要点だけスライドでお伝えしますね。

昼食手当とは?どこまでが税務に関係するの?

ベトナムでは、企業が従業員に支給する「昼食手当」は、正式にはmid-shift meal allowance(交替勤務中の食事手当)と呼ばれます。

支給方法には以下の3つがあります。

  • 自社調理、あるいは外部から食事を提供
  • 食券の配布
  • 現金での支給

この中で、現金支給がもっとも税務上デリケート
「どこまでが課税されないのか?」が、企業のリスク管理に直結します。

そもそも「730,000ドンまで非課税」はどこから来たの?

この有名なルールは、財務省の通達111/2013/TT-BTCに基づいています。

第2条第2項g.5号(同通達):
会社が現金で食事手当を支給する場合、MoLISA(労働・傷病兵・社会省)のガイドラインに従っていれば非課税
超える部分は、課税所得に含めなければならない。

この「MoLISAのガイドライン」にあたるのが、通達26/2016/TT-BLĐTBXH 第22条第4項です。

「会社は、従業員に対し、交替勤務中の食事手当を1人あたり月額730,000ドンまで支給できる。」

この水準は*税務総局の公文4767/TCT-DNNCN(2019年11月20日)でも再確認されています。

OLの内容を理解しよう!

ベトナム税務総局


社会主義共和国ベトナム
独立 – 自由 – 幸福

文書番号:4767/TCT-DNNCN
件名:従業員に対する交替勤務中の食事手当に関する個人所得税の取扱いについて

ハノイ市、2019年11月20日


宛先:カインホア省税務局 殿

税務総局は、カインホア省税務局から2019年9月25日付けで受領した文書番号4884/CT-NVDTPC(従業員への交替勤務中の食事手当に関する個人所得税制度に関する照会)について、以下のとおり意見を述べます。


1. 法的根拠

財務省の**通達111/2013/TT-BTC(2013年8月15日付)**の第2条第2項g号において、以下のように規定されています:

第2条:課税所得

g) 以下の項目は課税所得に含まれない:

g.5) 雇用主が交替勤務中または昼食の食事を、直接調理、食事の購入、または食券の提供といった形で従業員に提供する場合、これらの支出は課税所得に含まれません。

雇用主が食事を提供せず、現金で従業員に支給する場合、その金額が労働・傷病兵・社会省(MoLISA)の指針に従っている限り、課税所得に含まれません。
もし、その支出額がMoLISAの指針を超える場合は、超過分が課税所得に含まれる必要があります。

国家機関、行政機関の下部組織、政党、マス組織、協会などに対しては、MoLISAが定めた指針水準を超えてはなりません
非国家系企業・団体については、事業所長と労働組合代表との合意により支出水準を決定しますが、その金額も国家機関に適用される最大水準を超えてはなりません。


2. MoLISAの支出水準に関する具体規定

労働・傷病兵・社会省(MoLISA)通達26/2016/TT-BLDTBXH(2016年9月1日付)第22条第4項には、次のように明記されています:

「企業は、従業員に対し、交替勤務中の食事手当として、最大で1人あたり月額730,000ドンまで支給することができる。
この食事手当制度の実施に関しては、2008年10月15日付通達22/2008/TT-BLDTBXHに従うこと。」


3. 総合的な見解

上記の指針に基づき、企業が交替勤務中または昼食のために従業員に対して:

  • 直接調理する、
  • 食事を購入する、
  • 食券を提供する、
  • もしくは現金で支給する

いずれの形で支出を行ったとしても、MoLISAの指針に従った支出水準であれば、課税所得には含まれません

一方で、その支出水準がMoLISAの指針を超えた場合には、超過分が課税所得として取り扱われることになります。


4. 中小企業のケースにおける留意点

たとえば中規模企業が、食事の一部を直接調理し、残りを現金で支給したとしても、
その合計が1人あたり月額730,000ドン以内であれば、MoLISAの指針に従っており、
課税所得に含める必要はありません。


5. 実務対応の提案

税務総局としては、カインホア省税務局に対し、各企業の具体的な運用状況、社内規程、支出基準その他の関連事項を確認した上で、適切な個人所得税の課税判断を行うことを提案します。


税務総局は以上の内容を貴局に通知いたします。


送付先:

  • 上記宛先

  • 政策部(PC部門)

  • CS部門(TCT)

  • 税務総局ウェブサイト

  • 保存:VT部門、DNNCN部門


税務総局長 代行
中小企業・産業企業管理部 副局長
(TL. DIRECTOR GENERAL OF MANAGEMENT DEPARTMENT OF SME AND BUSINESS)

グエン・ズイ・ミン(Nguyen Duy Minh)

政令44/2025/NĐ-CPで何が変わった?

2025年、制度は大きく舵を切りました。その分岐点となったのが、政令44/2025/NĐ-CPです。

第34条第9項:
「交替勤務中または定量食の提供は、労働協約または社内規程に基づいて実施される。」

つまり、国家が一律に定めていた「上限730,000ドン」ルールが廃止され、企業が自ら決める方式に変わったのです。

【超重要】2025年の適用タイミングに注意!

ルール変更の適用時期が、実務で最も重要です。

期間法的状況実務の対応コメント
2025年1月1日〜6月14日通達26/2016は有効上限730,000ドンを厳守税務総局の指針や旧ガイドラインが依然適用される
2025年6月15日以降通達26/2016が正式廃止(通達003/2025/TT-BNV)上限なし。ただし社内規程や労働協約が必須「730,000ドンルール」は制度上消滅。企業が自らルール化を行う必要あり

📌 現在の根拠法:

  • 政令44/2025/NĐ-CP 第34条第9項(昼食手当の管理方法)
  • 通達003/2025/TT-BNV 第19条第2項(通達26/2016の廃止)

企業は今、何をすればいい?

「もう上限がないんだ!自由に出せる!」――そう思ったあなた、ちょっと待ってください。

非課税の条件は、今まで以上に“整備された社内ルール”に依存する時代になっています。

✅ 社内規程または団体協約に、金額と支給条件を明記
✅ 労働者代表との合意(議事録・メール・告知文など)を確保
✅ 支給実績がその規程通りであること(ズレがあると指摘される)

これらがないと、支給全額が課税対象となるリスクがあります。

よくある質問(FAQ)

Q:730,000ドンを超えて現金で支給したら?
→ 2025年6月14日以前は課税対象。6月15日以降は「社内ルールがあれば非課税可」。

Q:食事提供と現金を併用したら?
→ 合計額で管理し、社内規定に準拠していればOK。

Q:外国資本の企業にもこの新制度は適用される?
→ はい。通達111/2013/TT-BTCは、外資・民間含めすべての企業に適用されます。

まとめ:730,000ドンは終わった。でも「自由」ではなく「整備」が鍵。

✅ 旧通達に基づく「非課税上限730,000ドン」は、2025年6月15日で終了しました。
✅ その後は、「社内のルール次第」でいくらでも非課税支給が可能ですが、
✅ 税務上それを正当化するには、しっかりとした制度設計と記録が必須です。

もはや「国が決める時代」ではなく、企業が説明責任を持って整備する時代に入ったのです。

参考リンク・法令出典

  • 政令44/2025/NĐ-CP 第34条
  • 通達111/2013/TT-BTC(英語版)
  • 通達26/2016/TT-BLDTBXH(廃止)
  • 公文4767/TCT-DNNCN(税務総局)
  • 通達003/2025/TT-BNV(廃止通知)