みなさん、こんにちは、マナボックスベトナムの菅野です。

ベトナムに現地子会社を設立し、ドタバタした1年目。ようやく初年度終わった!と思ったら、何やら「会計監査」というイベントがあり、経理担当者から署名くださいと言われて戸惑っている。30ページくらいあるし(汗)

あなたは、こんな経験ありませんか?

本日は、ベトナムにおける「監査報告書」について解説していきたいと思います。見るべきポイントも解説しますので、サインする監査報告書の原本が、ベトナム語や英語であっても、ある程度安心できるはずですよ。

ベトナムの監査報告書の構成要素はこうだ!

まずは、全体像を把握しましょう。

  1. 経営者(取締役会)の報告書(会社側の情報)
  2. 独立監査人の監査報告書(第3者のプロが監査して意見)
  3. 貸借対照表
  4. 損益計算書
  5. キャッシュ・フロー計算書
  6. 財務諸表の注記

この6つの項目になります。さらに、これを整理すると以下の3つのグループに整理できると思います。

  1. 会社側(経営陣)の情報と責任
  2. 監査人の監査報告書
  3. 財務諸表関連

これについてそれぞれ解説していきたいと思います。日本との比較も含めてい行きますね。

税務調査や税関調査とは違うのでこの点も留意ください。

>>ベトナム、会計監査と税務調査と税関調査の相違点をわかりやすく解説 

1、経営者側Board of Directorsの報告書【社長の責任5つが明記!】

まず、Board of Directorsつまり、会社の経営陣側の情報です。このパートでは、以下のことが記載されます。英語だと「取締役会」となりますが、有限会社の管理組織の場合株主総会と異なり「取締役会」は存在しません。この点はややこしいですね。

  • 会社の経営陣(取締役会の構成メンバーなど、社長だけの場合、社長)
  • 経営者の責任

この2つです。

まずは、誰が経営者か?ですね。日系企業の場合、General Director(社長)及び、社長以外の法的代表者がいれば、その人の名前も記載されます。

次に経営者の責任です。あなたの責任のことが言語化され、公表されるのですから、きちんと理解する必要がありますよね。

一言で言うと、

「財務諸表を正しく作成する責任は経営者です」

と言うことです。こちら、以下の5つのポイントがあります。

  • 適切な会計方針を選択し、継続的に適用する(正しいルール)
  • 合理的かつ慎重な判断及び見積りを行う(見積もりは合理的)
  •  適用可能な会計基準に準拠し、重要な逸脱がある場合は、財務諸表に適切に開示し、説明すること(財務諸表に間違いがあれば、きちんと報告します)
  •  継続企業の前提が成立していない場合を除き、継続企業を前提として財務諸表を作成すること(すぐに倒産はしません)
  • 不正や誤謬に起因する重要な虚偽表示を最小限及び適切に財務諸表を作成するために必要される効果的な内部統制システムを整備及び運用すること(きちんとしたルールを整備しています)

ベトナムの子会社の社長様は、経理の専門家としての経験が、基本的にはない(経理部)と思います。それでも、会計について責任負うのです。社長の責任と会計は強く関連していると言えますよね。

確かに、責任が重くてプレッシャーに感じますよね。わかります。

日本で言うと「経営者確認書」という書類が該当すると思います。ただ、ベトナムのように添付されることはありません。そういった意味では、相違点があります。

社長の署名押印がなされます。

○経営者は、財務諸表について責任を負う

2、独立監査人による監査報告書

次に監査報告の部分です。要するに、あなたが責任負って作成した財務諸表(B/S, P/L,C/F)が、正しいのか?不正がないのか?と言うことについての意見です。大きく以下の2つの構成要素です。

  • 監査意見
  • 経営者の責任

この報告書の結論部分です。

そして、監査意見は以下の4つに分類されます。

  • 無限定適正意見(正しいです)
  • 限定付適正意見(一部を除いて正しいです)
  • 不適正意見(正しくないです)
  • 意見不表明(手続できなかったので、意見出せません)

日本だと、基本的には、無限定適性意見です。そのほかの意見が出るということは、滅多にありません。もし、そのようなことがあれば、経営者としては、ある意味ダメっていうことになります。なので、監査意見が万が一「限定付適正意見」とか「不適正意見」であれば、すごく揉めます。一方で、ベトナムの場合だと、しれっと「限定付適正意見」があるようです。この辺は要注意です!

ここでもまた経営者の責任の範囲が記載されます。責任が重大です。社長と監査人の署名・押印がされます。

会計監査の結果、結論が記載される。大事。

3、財務諸表、(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)と注記

続いて、監査対象である決算書の情報です。あなたが、責任を負った財務諸表の情報ですので重要です。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュ・フロー計算書

これと注記が記載。

いわゆる、財務3表と呼ばれる決算書です。これには、チーフアカウンタントの署名もされます。そして、着目すべきは、注記です。

注記とは?

注記って、わかりにくい説明ですが、簡単です。要するに、財務諸表だけの情報だとわかりにくいので、より理解を深めるための「補足説明情報」です。取り扱い説明書みたいなものですね。

これは、以下のように分類するとわかりやすいです。

グループ

解説

会社の基礎情報

会社の形態(有限会社など)、投資家情報、従業員の数、住所

会計処理の基礎

会計年度、記帳通貨(ドンかUSD)、準拠した会計ルール(基本200/2014/TT-BTC)、継続企業の前提

会計方針(ルール)

会社が採用した主な計算ルールのことです。例えば、棚卸資産の評価方法や固定資産の減価償却方法や耐用年数なんかは、いくつか、処理方法・選択肢があります。収益認識の基準もあります。このうち会社がどの方法を選択したかを記載します。

こうすることによって、財務諸表の利用者は、他社の財務諸表の数値との比較がしやすくなります。

ブレークダウンした補足説明(いわゆる明細)

B/S、P/Lなどの財務諸表の数値は、ちょっと抽象度が高いため、より理解しやすくするための補足説明。例えば、現金及び現金同等物の明細、得意先別の売掛金、仕入れ先の買掛金明細、固定資産増減明細、販売管理費明細(ただ、それでも、大雑把)関連当事者取引も含まれる。

簿外情報など、その他

財務諸表には計上されていないが、会社の財務状況をより正確に理解するための情報。例えば、一部のリース債務、債務保証などのような情報。

重要な後発事象(決算日後に発生した事象)や関連当事者取引。

あなたが責任を持って作成した財務諸表の情報です。

会計監査の対象となる財務諸表とそれを詳細に説明している注記

ベトナムの監査報告書の見るべきポイント

本日は、ベトナムにおける監査報告書を解説しました。

見るべきポイントは、まず、監査意見です。もしかしたら、あなたが、適性意見つまり、正しいですよって監査法人からもらっていると思っていてもそうでない可能性もあります。そのため、まず結論である、意見を確認しましょう。

その後は、最初の方に記載してある「経営者の責任」をあらためて見るのもいいと思います。なぜならば、会計と経営者の責任が言語化されることによって明確になっているからです。身が引き締まると思いますよ。

>>稲盛和夫の実学(書評・感想)から学ぶ海外子会社経営管理 「会計がわからない人は経営ができない。」【チェックリスト付き!15個の項目】 

そのあと財務諸表が続きます。こちら管理会計とは別であくまで投資家向けなので、さらってとでいいと思います。ただ、これは、月次決算で深く財務諸表を見ている場合です。

監査報告書を見る場合のポイントとしてお役に立てれば幸いです!