みなさん、こんにちはManalaboの菅野です。
今日は、『ベトナムの失業保険に加入していない期間と退職手当』について解説していきたいと思います。
今日のお話しを聞いて頂ければあなたの潜在的な債務を理解でき、サプライズや紛争を防止できると思います。
ベトナムで2007年から法務を中心に支援している専門家のリー氏にも意見を伺ってみました。2021年まで延べ300社超の日系企業を支援しています。
この記事のもくじ
2009年から2015年の間は従業員10名以上の会社が対象
2009年から2015年の間は、以下の会社が「失業保険」の加入義務があった。
- -労働者10人以上を雇用する国内外の組職、企業及び個人
- -12ヵ月以上の期間で労働契約を締結する労働者
ポイントは、「10人以上」という点です。つまり、10人未満の場合には加入義務がありませんでした。
ベトナムでは「失業保険制度」が2009年1月1日より導入(Decree 127/2008/ND-CP)されました。
この制度より、会社からではなく保険制度による保険当局から退職金(失業手当)が給付される仕組みとなりました。
その後、2015年5月1日から発効したDecree28/2015/NĐ-CPにより、この10人以上の条件が無くなりました。
一方で、大分前になりますが、2008年12月31日以前の勤務期間に対応する退職金については、改正労働法(No.10/2012/QH13)48条に基づき、各企業が退職金を支払う必要がありました。
一体なにが論点?会社が「退職金」を支払う必要ある
この2009年から2015年までの期間、「失業保険」に加入していないというケースが小規模の会社ではあるでしょう。
この期間「失業保険」に加入していないことから、退職金の論点が発生します。要するに保険当局ではなく会社が支払う義務が生じます。
労働法に準拠すれば、「失業保険」に加入していない期間、「退職手当」または「失業手当」を支払う義務がある。
この点を留意する必要があります。
すなわち、2009年から働いており、2015年以降に従業員が退職される場合、会社は労働法に従って、退職金(退職手当)を支払う義務があるのです。
なぜ、留意する必要があるか?というとキャッシュアウトが伴うからです。経営と資金繰りはどうしても切り離せません。予期しないキャッシュアウトが伴うとサプライズとなり、時には重要な経営意思決定事項に集中できないものです。「お金」と「夢」は関連しているのです。
なお、「退職手当」と「失業手当」の違いは、普通に退職するか?そうでないか?というイメージでよろしいかと思います。例えば、コロナによる不況でどうしても退職してもらう必要がある場合には「失業手当」となります。そうではなく、「新しい会社に転職が決まりました」という場合は「退職手当」です。大体そんなイメージで大丈夫です。
具体的には労働法の42条と43条によって解雇する場合は「失業手当」となります。
- 第42条 構造,技術の変更又は経済的理由がある場合の使用者の義務
- 第43条 企業が消滅分割,存続分割,新設合併,吸収合併する場合;企業を売却,賃貸し,企業の形式を転換する場合;企業,協同組合の財産の所有権,使用権が譲渡される場合の使用者の義務
引用元:ベトナム労働法2019
では、いったいいくら会社は退職金を支払う義務があるのか?
ここが気になりますよね。もし、あなたの会社が小規模の要件を満たしていた場合です。
基本的な計算は①単価と②期間によって計算されます。
退職手当を計算するための単価
こちらは、労働者が退職する直前の労働契約に従った連続6か月の平均賃金です。つまり、例えば2021年に退職すれば、2009年ではなく2021年の水準が反映されます。
具体的には、2009年に300ドル程度であっても2021年に1,500ドルとなっていれば、この水準で計算されます。
「失業保険」への未加入の期間
続いて期間ですが、この場合は2009年の2015年の未加入の期間となります。理解するため、話を簡便にするめに2009年1月から2015年12月の6年間の未加入だという前提で考えてみましょう。
- 連続6か月の平均賃金:1,500USD
- 期間:6年
この場合750(1,500の半分)✖︎6年=4,500ドルとなります。結構大きいですよね。
第46条 退職手当
1.この法典第34条1項,2項,3項,4項,6項,7項,9項及び10項の規定に従って労働契約が終了する場合,使用者は,使用者のために12か月以上常時働いていた労働者に対して,1年間の勤務ごとに月給の半額分の退職手当を支払う責任を有する。但し,社会保険に関する法令の規定に従って年金を得るための条件を満たしている場合,及びこの法典36条1項e号が規定する場合を除く。
引用元:ベトナム労働法2019
失業保険の未加入で会計上と経営で気にすべき点
本日は、ベトナムで「失業保険」に加入していない点について解説しました。
- 2009年→「失業保険制度」が開始
- 2009年から2015年で「失業保険」に加入しなくてもいい条件があった
- 失業保険に加入していない場合は退職金の義務は会社が負う
義務を負うため、引当金などの計上の検討が必要でしょう。
すなわち、2009年から2015年の間に会社で働いており、今現在も働いている場合で、「失業保険」に加入していない場合には退職金の義務を負っているため、引当金の計上をする必要があると考えられます。
また、資金繰り的にもこのような負債が潜在的にあるんだ!と認識しておくことは必要でしょう。
お役に立てれば幸いです。