ラボの菅野です。
日本会計基準(J-GAAP)とベトナム会計基準(VAS)の損益計算書には、表示方法にいくつかの主な違いがあります。これらの違いを理解することは、ベトナムで事業を展開する日本企業にとって重要です。
というのは「損益計算書」はベトナム現地社長の通信簿だからです。この「通信簿」で
- 駐在させたけどあいつ全然使えないな
- よく頑張っている。評価をあげよう
というような評価を本社からされるからです。だから重要でしょう?
本ブログでは、J-GAAPとVASの損益計算書の表示の違いについて詳しく解説します。図解も含めて解説するので理解しやすいと思います。
なおこの記事では「少数株主損益」や「包括利益」については除いています。難しすぎるしベトナムにおける経営という意味で必要ありません。
なお、以下のリンク先でベトナム勘定科目完全パッケージを閲覧することが可能です(会員様限定のページ)
>>M-Lab_ベトナム勘定科目【完全パッケージ】連結財務諸表にも役立ちます【ダウンロードページ】動画で解説しています
日本基準とベトナム基準の決算書の違いを図解で理解する
まず視覚的に全体を押さえましょう!
前提として以下の知識も重要になります。
>>社長!損益計算書の「利益」でおやって思ったことありますか?各段階損益の覚え方
売上高の表示
J-GAAP:
- 売上高は「Net Sales」として表示されます。これは値引き後の純売上の金額です。
VAS:
- VASでは「総売上」と「売上から控除」(値引きとか)が別掲され、差額として「Net sales」が表示されます。
営業利益の表示
ここが最大のポイントです。
J-GAAP:
- 営業利益(Operating Profit)は、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いた後に表示されます。この表示形式により、企業の本業の収益性が明確に示されます。
VAS:
- 営業利益に「営業外」である金融収益や金融費用が含まれます。例えば支払利息や為替差損差損益です。
日系企業の場合、借入金が多額であったり外貨建取引も多くあることから支払利息や為替差損差損益が大きな金額になることがよくあります。でも、支払利息や為替差損差損益はベトナム社長がどうがんばっても管理できませんよね。したがって経営者の評価という意味で「営業利益」で評価されると辛くなっちゃう場合があります。「営業利益」が大きなマイナスだけどほとんどが「為替差損差損」だったというような場合です。
>>ベトナム式の損益計算書の欠点とは?その欠点を解決する方法
「販売費」と「一般管理費」
J-GAAP:
- 「販売費と一般管理費」として一括表示
VAS:
- 「販売費」と「一般管理費」が別掲
一括か別掲かです。ベトナムの場合は勘定科目が641「販売のため」と642「一般管理のため」と分かれています。この分類を重視して表示上でも別掲となっているのでしょう。
>>ベトナムの勘定641(販売費)について徹底解説!【勘定科目解説シリーズ】
>>ベトナムの勘定642(一般管理費)について徹底解説!【勘定科目解説シリーズ】
経常利益という概念がない
J-GAAP:
- 「営業利益」から「営業外損益」を引いたのが「経常利益」
VAS:
- なし
です。
まとめ
表としてまとめると以下のようになります。
項目 | J-GAAP | VAS |
売上高の表示 | 売上高は「Net Sales」として表示される。これは値引き後の純売上の金額です。 | 「総売上」と「売上から控除」(値引きなど)が別掲され、差額として「Net sales」が表示される。 |
営業利益の表示 | 営業利益(Operating Profit)は、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いた後に表示される。企業の本業の収益性が明確に示される。 | 営業利益に「営業外」である金融収益や金融費用が含まれる。例えば支払利息や為替差損差損益。日系企業の場合、借入金や外貨建取引が多いため、支払利息や為替差損差損益が大きな金額になることが多い。 |
「販売費」と「一般管理費」の表示 | 「販売費と一般管理費」として一括表示。 | 「販売費」と「一般管理費」が別掲。ベトナムでは勘定科目が641「販売のため」と642「一般管理のため」と分かれているため、別掲となっている。 |
経常利益の概念 | 「営業利益」から「営業外損益」を引いたのが「経常利益」。 | 経常利益という概念は存在しない。 |
是非お役にたててください!