ラボの菅野です。

今日は『ベトナムの日系企業を買収する時の税務DDのポイント』についてお伝えします。

IT企業を最初から設立するよりもすでにある会社を買収したほうがスピードの面でメリットがあることから買収の相談が増えてきています。

そこでそのような会社のDDのポイントをお伝えします。

税務DDとは?

前提として確認しなければいけません。そもそも税務デューデリジェンス、税務DDってなに?という話です。この定義、要するに…

  • 税務申告をしてない。漏れている。などによる誤りによってどれくらいの罰金や利息が発生するの?

を評価することです。もう少し難しい言葉を利用すれば以下のようになります。

税務DDの目的は、対象企業の税務リスクを正確に把握し、M&Aの実行可否を判断するためです。具体的には、税務ポジションを把握することに始まり、過去の税務申告や未解決の税務問題、税金の未払い状況、将来の税務リスクを洗い出し、買収後に想定外の損失が発生しないようにすることが主な目的です。さらに将来のストラクチャー検討に有用な情報を集めることも目的です。

ベトナムの日系企業の個人税の税務リスク

ずばり個人所得税のリスクです。例えば、

  • 日本人について、日本でもらっている給与や賞与についてベトナムの個人所得税を申告納付していない。ベトナムの給与だけでいいと思っていた。
  • 日本人のアパート代について現地法人で負担しているが、個人所得税の申告に含めて計算していない、など
  • 過去、日本親会社からベトナム現地のサポートのために長期の出張支援をしていた。当該出張者の宿泊代等は現地法人で負担していたが、ベトナム現地で個人所得税は申告していない。
  • 法的代表者の所得を申告してないなど。
  • 経費や手当について全て個人の所得になると思っていなく経費にしていた。規定などない。
  • 〇〇の外国契約者税について申告が漏れていた。もっとも、既に申告済み など。

ベトナムで働いていたという実績があるのに全ての所得について申告してないない。短期出張者の場合はそもそも申告していないなどです。

買収するための税務DDの対策

このようにリスクはある程度パターン化されます。上記を抽象化して言語化すれば

  • 申告すべき給与系の所得の申告が漏れている(知っているがしない。また申告することをそもそも知らない)
  • 申告すべき経費系(手当も含む)の所得が漏れている

金額が正確ではないという誤りもあるかもしれませんが、大きくは上記です。少し残念なのが日本の所得について申告すべきだと知っているのに税金を払いたくなから申告していないケースがある場合です。

このような場合、将来的に追徴課税の可能性が高いので買収してもその分のキャッシュアウトを見込んでないと買収金額を誤って設定してしまいます。例えば2,000万円の価値があると思った会社であっても、上記の税務リスクを評価(例えば500万円’)を漏れてしまえば、1500万円に値切れる(2000-500で1500)のにそれができず、損してしまいます。時には買収金額より税務リスクが大きい場合だってあります。

なので税務DDが大事です。このリスクは「漏れ」ですから申告書やそれに関連する証憑を見ても意味がありません。実際に申告書に乗っていないのですからね。一般的には公認会計士などの専門家が税務DDを実施します。

  • 1人辺りの個人所得税額を相場と比較(分析)する
  • 本社の関連する人や本社の税理士に質問する

この2つでしょうね。

まず一つ目ですが、日本人の給与相場からしてあまりにも低い個人所得税の場合は日本の給与分を申告してないか不正に減額している可能性が高いです。スタートアップの創業者社長以外であれば、1人の給与が10万とか20万とかである場合はありえませんよね。駐在員の平均年収は500万円から1,000万円です。なので一人当たりの納税額をレビューすることが大事です。

実際に「日本の給与を申告してない」「日本の給与を不正に誤魔化している」という事例はあるようです。以下のブログを参考にしてください。

>>日本の給与分を納税しない駐在員は罰金だけでなく懲役の可能性もある!【7年も懲役】

このようなことを確認するために、日本本社の間接的に関連する人や本社の税理士に質問することも有用でしょう。悪意のあって申告してない場合もあるため、直接的に関連している人に聞くのではなく間接的に関連している人(たとえば人事部の何人かに聞くとか)や税理士さんに聞いてみてください。特に税理士さんに聞けるのであればいいでしょう。職業倫理上嘘をつく可能性が低いからです。

なおマナラボでは以下のように質問書を提供しております。

>>M-Lab_ベトナムで税務DDする時の税務質問チェックリストの紹介【M&Aコンテンツ】

本日のまとめ

今日はベトナムに進出している日系企業を買収する時の税務DDについて解説しました。

  • 日本人の駐在員は所得を全て(ベトナム、日本)を申告している?
  • 日本からの出張者について申告している?
  • どのようにDDを行うか?申告金額が過小じゃないか?をチェック。本社で所得について情報を持っていそうな人に聞く。

でした。お役に立てれば幸いです!