税務や社会保険についてベトナムと日本を比較してみたいと思います。
最近、話題の「年収103万円の壁」。SNS等で話題になっていますね。なぜでしょうか?それは多くの人に影響をあたえるからです。もう少し言えば働いている人(奥さんなど)の手取りが増える可能性があるからです。だから関心が高いのです。お金に関する関心はみんな強いのですね。
そもそも「年収103万円の壁」とはなんでしょう?
「年収103万円の壁」とは、日本で特にパートやアルバイトで働く人が気にする所得の基準です。この壁を超えると、税金や社会保険の支払い義務が発生し、手取り収入が減る可能性があります。以下のようにいくつかのポイントがあります。
喩えるとすると…。
ある日、みんなのお家で「お小遣いのルール」が決まりました。このルールでは、1年間にもらえるお手伝いによるお小遣いが10,300円以下なら、何もお家に払う必要はないんです。自由に使っても良いお金です。
でも、もし1年間で10,300円を超えてしまったら、お家のルールで「ちょっとだけお金を家に渡してね」と言われるようになります。たとえば、お小遣いがたくさんもらえた年には、その一部を家に返すことになるんです。そうすると「お手伝い」は10,300円を超えない程度にやっておこう!というモチベションになりますよね。
その他
- 社会保険の壁(基準額を超えると社会保険に加入)
- 扶養控除の壁(基準額を超えると扶養控除が受けられなくなる)
という壁もあります。いずれも抽象化すると意味合いは同じで、「基準額を超えると手取りが減る」という影響があります。
この記事のもくじ
なぜ引き上げが検討されているのか?
現状給与所得者の所得控除は、給与所得控除55万円と基礎控除額48万円を合わせて103万円です。それが178万円になると。いろいろと理由がありますが以下の理由がしっくりくるかと思います。それは
「この概念の元は最低賃金の引き上げによるもの」です。
103万円の壁が最後に引き上げられたのは1995年だそうです。
- 1995年の最低賃金が611円。
- 2024年の最低賃金が1055円。
1.73倍程度ですね。 103万の1.73倍=178万円。なので実質的には変わっていないとも言えます。
ベトナムではどうか?
ではベトナムではどうでしょう?いくらまでなら「所得税」が掛からないのでしょうか?最初にまとめると以下のようになります。
項目 | ベトナム | 日本 | 日本(案) |
基礎控除 | 約79万円 | 48万円 | 123万円 |
給与所得控除 | 0 | 55万円 | 55万円 |
合計 | 約79万円 | 103万円 | 178万円 |
基礎控除
- ベトナム:月額1,100万ドン(約6.6万円)、年間13,200万ドン(約79万円)。
- 日本:年間48万円。
ベトナムの基礎控除額は、年間ベースで日本より高いです。ベトナムの物価や生活費を考慮して設定されていますが、日本は控除額が低めに見えます。
給与所得控除
ベトナム:給与所得控除という概念はなく、主に基礎控除と扶養控除で所得を減らす仕組みです。
日本:給与所得控除は、年収に応じた割合で計算されます。この時点の給与所得控除は以下の通りです。
- 年収が180万円以下の場合、給与所得控除は55万円。
- 年収が180万円超えから360万円以下の場合、年収の40%+10万円。
- 年収が360万円超えから660万円以下の場合、年収の30%+80万円。
- 年収が660万円超えから850万円以下の場合、年収の20%+180万円。
- 年収が850万円超えの場合、一律195万円(ただし一定の条件あり)。
日本は給与所得者の実質的な負担を減らすため、年収に応じた控除が手厚く設けられています。一方、ベトナムには給与所得控除がありません。ここがポイントですね。基礎控除と扶養控除(主にお子様)が主な控除手段となります。
扶養控除
- ベトナム:被扶養者1人あたり月額440万ドン(約2.4万円)、年間5280万ドン(約28万円)。
- 日本:一般の扶養控除は年間38万円(16歳以上の扶養家族)、配偶者控除や特別扶養控除など、扶養者の状況に応じて控除が異なります。
ベトナムでは扶養控除が標準化されており、複雑さが少ないのが特徴です。ただ範囲は狭いですし(おこささんのみでしょう)、女性の働く率が高いのでその辺りが日本と異なります。日本は、扶養家族の年齢や状況によって細かな分類があり、手厚い控除がある反面、制度が複雑ですね。
>>【図解あり】ベトナム個人所得税、扶養控除の適用は厳しい理由を解説します!
所得税率
- ベトナム:累進課税で、税率は0~35%(課税所得に応じて)。
- 日本:累進課税で、税率は5~45%(課税所得に応じて)。
両国ともに累進課税制度ですが、最高税率が日本の方が高く、税負担も重めです。ただ、最高税率に到達するのはベトナムのほうが早いです。
>>【図解あり】ベトナム個人所得税、扶養控除の適用は厳しい理由を解説します!
ベトナムと日本どちらの国が「壁」が高い?
「壁」の定義は「ある基準までなら税金がかからない」でしたね。そのような場合、以下の視点で比較するのがいいのかもしれません。
最低賃金で比較してみる。ベトナムの方がお得感はある
日本の場合は、2024年の最低賃金が1055円(時給)でしたね。ではベトナムではどうでしょう?定期的に変わりますが月額4,960,000ドン(約3万円)なので、23,800VND(約142円)です。
項目 | 日本 | ベトナム |
a;最低賃金(時給) | 1055円 | 142円 |
b:最低賃金(月)(ベトナムが想定している時間を使った) | 22万円程度 | 3万円程度 |
c:年収(b*12) | 264 | 36 |
d:控除合計 | 103万円 | 79万円程度 |
d/c 控除額の最低賃金に対する割合 | 39% | 219% |
となっています。ちょっと乱暴なところ(賞与とかいれてない)もありますがベトナムのほうが労働者に「壁」という意味では優しいということなります。つまり、所得税を払わなくてもいい「壁」が大きいのですね。税金が発生しない人の割合が多いということです。ちょっと古い情報ですが、きちんとデータにも出てきていますべ。1人辺りの所得税がだいぶ低いです。
>>【図解で解説】ベトナム経済を読み解く!ベトナム歳入・税収を4つの視点で解析≪日本の歳入との比較分析あり≫
ベトナムの場合見えない所得もたくさんあるのでその辺りはちょっと難しいのですが。
まとめとして
今日は「〇〇の壁」について解説します。
- いくら以上なら税金取られるかもなんでそれ以上は働かないほうがいい。というお金に対するマインド
- そもそも最低賃金が引き上がっているのだからこの「壁」も高くならないとおかしい。
- ベトナムでも「壁」があるが、そもそも女性がメインで働くことが多いのであんまり気にしていない。話題にならない。
- 「壁」のお得感で言えばベトナムのほうがあるとも考えられる
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