ラボの菅野です。今日は「DES(デットエクイティスワップ)についてお話ししようと思います。

「会社の財務を立て直すためにDESって聞いたけど、なんかややこしい…」という真剣なお悩みですね。借金があるけれども返済するためのお金がない…。といった時に会計事務所の人が「DESもいいかもしれませんね」なんて発言したり。

なお以下のではもっと深い内容を話しています。限定記事です。

>>🔐M-Lab_会社清算時の借入金の処理の3つのシナリオと会計・税務の分析レポート

うん?なんだ?「デス」はてはて….という人も多いと思うんです。

そこで今日は、DESそのものじゃなくて特にちょっとトリッキーな存在である**擬似DES(ぎじデス)**について、じっくり、でも肩の力を抜いて解説してみようと思います。またベトナムの視点で見ていきます。

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今日のテーマの擬似DES、こんな感じです

  • 擬似DESってそもそも何なの?
  • 通常のDESとどう違うの?
  • 「それ、節税目的でやってるでしょ?」って言われたらどうする?
  • 心がちょっと軽くなる考え方も、こっそりお伝えします

この記事を読むと、「なんとなく難しそう」と思っていた擬似DESが、ちょっとイメージしやすくなると思います。

そして、もしあなたが経営者や財務に関わる立場なら、「この仕組み、うちでも活かせるかも?」と考えるヒントになるかもしれません。冒頭でも記載したんですが、多額な借金があるんだけど返済するお金がない!という場合にはよくこのDESを検討するんです。

よくあるDESの説明をします。

まずよくある説明から。DESの説明です。

「DESとは、債権者が企業の借金を株に変えることで、会社の負債を減らし、資本を増やす仕組みです。」

…って言われても、ですね。うん、それはそうなんですけど、いまいちピンとこないですよね。

これ、すごくざっくり言うと、 **「返せない借金を“出資”に変えてもらうことで、財務がキレイに見えるようにする作戦」**です。

例えば、「友達に3万円借りてたけど、返せないから“うちの焼肉屋の株主になってよ”って言った」みたいな感じです。ちょっと強引ですが、そんなイメージ。

会計思考で仕訳でも考えてみましょうか?

この場合、

  • 借入金3万/ 資本金3万

です。負債が減って資本金が増える。なんですね。これがいわゆるDES。

で、擬似DESってDESと何が違うの?

ここが今日の本題。

擬似DESは、一度お金を現金でやりとりするのがポイントです。しかも、それを「いかにも出資っぽく」見せつつ、最終的には借金返済に使う。

どういうことかというと…

  1. 債権者(ベトナムの場合、親会社の場合が多い)が会社(例ベトナム子会社)にお金を出資します(この時点で「株主になるよ〜」)。実際にお金を出しているというのがポイントです。
  2. 会社はそのお金を使って、その債権者に借金を返します。
  3. 債権者は「株主としてお金を出したけど、借金返してもらったからトントンだね」みたいな状態になります。

なんか不思議ですよね。お金がぐるっと一周してるだけです。

「え、それってズルくないの?」という不安に答えます

読んでてこう思った人、いると思います。

「結局、節税のためにわざとお金回してるだけじゃん…それって、税務署に怒られるんじゃないの?」

こんなこと思う時点であなたはかなり会計センスがあります。DESと比較されう方法として「債務免除」という行為もあるんですね。この場合、借入金を消して債務免除益が生じるのでそれが利益となるので法人税が発生する場合もあるんですね。

実は、日本では、その通りで、税務当局も擬似DESにはちょっと厳しめな目を向けています。例えば相互タクシー事件(福井地裁)とか日本スリーエス事件(東京地裁)とか。

特に「これ、最初から税金逃れのためだけに設計してたよね?」みたいな場合は、「租税回避行為」として否認されることもあります。

でもですね、だからといって、すべての擬似DESが悪いわけじゃないんです

擬似DESのメリットも、ちゃんとあります

これはあくまで私の考えですが、擬似DESは、 **「税務リスクを回避しつつ、会社を救うための現実的な選択肢」**として使えることもあると思っています。まあ普通にスキーム自体は合法なはずですしね。

特に、企業が債務超過で、通常の「債務免除」だと債務免除益(税金かかっちゃう利益)が出ちゃうとき。そういう時に、わざと現金を一周させることで、課税を避けられるというのは、ある意味「法の中での最適化」なんです。

もちろん、やり方次第では「うーん、それはちょっとやりすぎかな」と思うケースもあることはあると思います。けれどもこのスキーム自体は論理的にも問題ないはずです。

そもそも資本調達を最初「貸付」としておいてやっぱり「投資」に変更しますね。ということが間違っているとは言えないからです。

なんでそんなにややこしいの?と思ったあなたへ

擬似DESって、仕組みだけ見ると「あれ?合法的に税金減らせちゃうの?」って感じですが、実務ではかなり慎重にやらないといけません。

なぜなら、**「見た目は普通だけど、中身は節税だけのスキーム」**って思われたらアウトなんですよね。まるで、「ただの飲み会」と言い張る接待みたいなものです。

だから、擬似DESを活用するなら、

  • 本当に財務改善が目的なのか
  • 経済的合理性があるのか
  • 納得感あるスキームになっているか

この辺りを、ちゃんとストーリーにしておくことが大事になります。

擬似DESと普通のDESのちがい、表にするとこんな感じ!

DESと擬似DESの比較もしておきますね。

項目普通のDES擬似DES(ちょっと変化球)
ざっくり説明すると?

借金をそのまま投資に変えちゃう

借入金***/資本金***

一度お金を入れて、そのお金で借金を返す流れ

  • 現預金***/資本金***
  • 借入金***/現預金***
出資のカタチ金銭債権を“現物出資”新しいお金(現金)で“普通の増資”
債務の消し方「混同」っていう法律上の魔法で消す(民法的な処理)普通にお金を払って“弁済”する
税金の扱い(出資者側)

株を時価で受け取る → 差額は損金にできることも

  • 投資80/債権100
  • 損20
出資しただけなので、基本的に損金処理なし
計画投資局からの目線資本が変わるのでIRC変更。清算を前提としるなら認めたくないなあ

資本金が変わるのでIRCが変更。事業計画も出してね。

見た目のスッキリ感ストレートな財務再編に見えるお金がグルっと一周してて、ちょっと裏技感あり
使うタイミングのイメージ本気で債務を株にしたいとき課税を避けつつ柔らかく負債処理したいとき
ひとことコメントちゃんとやれば王道の再建スキームです設計が上手ければ、かなりスマートな選択肢です◎

 

今日のまとめ

今日は擬似DESについて、ざっくり・ゆるっと解説してみました。擬似って言葉を使うのは日本だけかもしれません。

いきなり「これやりましょう!」という話ではなくて、「こういう仕組みもあるんだなぁ」と、少しでも理解の糸口になればうれしいです。

よく言われる「債務は資本に変えられる」という言葉の裏には、実はたくさんの事情と選択肢があるんですよね。

どれが正解かはケースバイケースですが、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」の間には、かなりグレーなゾーンもある。そこをうまく見極めることが、今の時代の財務には求められているのかもしれません。

それでは今日はこの辺で! また次回も、ちょっとややこしいけど、知っておくと役に立つ仕組みを一緒にのぞいてみましょう〜!

――すげの