こんにちは!マナラボの菅野です。

最近、「輸出加工企業(EPE)って聞くけど、実際どうなの?」「うちもベトナムでEPE設立を検討してるけど、難しいのかな…」というご相談をよくいただきます。

確かにEPEは、言葉だけ聞くとなんだかハードル高そうですよね。でも、正しく理解して準備さえすれば、実はめちゃくちゃ強い武器になります!

今日の記事では、

  • ✅ そもそもEPEって何?
  • ✅ どうやって作るの?
  • ✅ 設立後に気をつけるべきリアルな落とし穴

を、できるだけ優しく、でもきっちり押さえて解説していきます!なるべく網羅的に。

これを読むと、「EPE設立って怖くないかも!」「EPEってこういうこと!なるほど」って思ってもらえるはずです。ではいってみましょう!

そもそも輸出加工企業(EPE)ってなに?

まず最初に、定義をおさらいしましょう。

📖 根拠:政令35/2022/ND-CP 第2条第21号

EPEとは、
「輸出加工区、工業団地、経済区の中で、輸出品の製造や輸出サービスを行う企業」です。

超シンプルに言うと、
👉 海外に売るための製品を作る“専用の工場”、これがEPEです!

以下で図解もしているのでそちらを見てください。定義については変わっておりません。

>>【図解あり】ベトナムの輸出加工企業(EPE)とは?輸入関税やVATの免税を図解で解説!

工業団地の中に、海外向けにひたすら生産するブロックがあって、そこに入ってる工場、みたいなイメージです。ベトナム国内だけど海外の会社みたいな感じですね。

ちなみに最近では、エコ工業団地(環境に配慮した工業団地)も推進されていて、将来的には「クリーンなEPE」なんていう呼び方が出てくるかもしれませんね。

EPEを作るには?設立の流れとポイント

「よし、海外向け工場つくるぞ!」と思ったら、次は設立手続きです。

なお、通常の流れもおさえておくといいですよ。

>>【ベトナム進出】ベトナムで会社設立のために必要な書類と6つのステップ

お客様向けには以下も提供していますよ。

>>M-Lab ショップ【ベトナム会社設立のガントチャート】

📖 根拠:政令35/2022/ND-CP 第26条

設立の基本ステップはこんな感じ👇

  1. 投資登録証明書(IRC)の取得
     → この時に「EPE設立目的あり」と記載してもらうことが重要!

  2. 税関管理・監督条件を満たす誓約を提出
     → 「ちゃんとフェンスで囲みます!」「カメラつけます!」と約束します。

  3. 建設完了後、税関当局から現地確認を受ける
     → 実際に「フェンスある?」「24時間カメラ回ってる?」をチェックされます。

  4. 認定OKなら、税制優遇スタート!

つまり、最初の段階から“EPEとしてやります!”って宣言しておくことがすごく大事なんです。

もし忘れると、あとから税制優遇が受けられなくなるので注意です!

EPEで知っておきたい税制メリットと注意点

メリット:こんなにあるEPEの特典!

輸出入税の免除

📖 根拠:政令35/2022/ND-CP 第26条

海外から機械・部材・原材料を仕入れても、完成品を海外へ輸出しても、基本的に関税・輸出入税が免除されます。

これ、ざっくり言うと、
👉 「原料を輸入して→加工して→輸出すれば、税金ゼロ」 という超強力なスキームです。

工場を回すうえでの仕入れコスト(VATは間接税ですが)が大幅に削減できるので、グローバル競争の中で価格優位性が出しやすくなります!

国内から仕入れる場合もVAT0%が適用可能

これもかなり大きいポイントです。たとえば、ベトナム国内のサプライヤーから資材を買う場合、通常なら10%のVAT(付加価値税)がかかるところ…

➡️ きちんと「EPE向け」として申告すれば、**VAT0%**にできます!

つまり、国内調達でもコストが抑えられるわけですね。しかもサプライヤー側も「輸出売上」として扱えるので、双方にメリットがある仕組みです。(※ ただし、ちゃんと輸出申告=オンザスポット取引手続きをしないとダメです。後で出てくる注意点参照!)

注意点:ここを知らないと痛い目をみる

 国内販売には関税・輸入VATが課される

もしEPEがベトナム国内の会社に商品を売りたい場合、それは「輸出→輸入」という形を取らないといけません。

つまり、

  • EPE側で輸出申告
  • 国内企業側で輸入申告&関税+VAT支払い

が必要です。

簡単に言うと、
👉 国内販売するときは、税金がどっさりかかる と思ってください!

「EPEだから普通に海外輸出と同じように国内販売しても大丈夫でしょ!」と油断すると、後から関税申告漏れで大きなペナルティを受けるリスクもあります。

🚨 オンザスポット取引でも必ず通関手続きが必要

これちょっとややこしいので図解で理解する必要あります。

以下でかなり詳細に説明しております!

>>ベトナムにおけるOn the spot Export and Import(みなし輸出入通関制度)の3つのパターンを図解で解説!

「現場渡しだからいいでしょ」「小口だから省略しちゃえ」
…これ、絶対にNGです!

政令35では、
👉 オンザスポット取引(国内企業との現場渡し)も輸出入と同じ扱いと明確に書かれています。

つまり、

  • きちんと税関に申告して
  • 正式な通関手続きを踏まないと
  • 将来的に取引全体が否認されるリスクもある

ということです。

特に、輸出入免税を享受している企業は、
後でまとめて税務監査が入った時に「オンザスポット取引の書類不備」で重加算税を取られる事例もあります。これは実際にあった話です!

 輸出率維持のプレッシャー

もうひとつ見落とされがちなのが、輸出割合の問題

なおそもそも国内販売できるの?というのは以下で説明しています。

>>EPE企業は国内販売できるのか?政令第35/2022/ND-CP号のポイント

EPEは「輸出を前提とした企業」なので、あまりにも国内販売が多くなると、

  • 税務署から「この会社、EPEじゃないんじゃない?」と疑われたり
  • 最悪、EPE資格を取り消されたり する可能性もゼロではありません。

このあたりはいろんな可能性があるので必ず専門家に聞くといいでしょう。

運営しながら、ちゃんと輸出販売が維持できるような計画を立てておきましょう。

EPE運営で陥りやすい「落とし穴」

EPE設立が無事完了しても、実は本当の勝負はそこからです。運営を始めてみると、思わぬ落とし穴があちこちに潜んでいます。

「せっかくの税制優遇が取り消される!」なんて悲劇を防ぐためにも、
よくあるトラブルとその回避ポイントを、具体的をざっくりとですが(本当はもっとリアルなストーリーがあります)ご紹介します。

倉庫管理ミス(いわゆる在庫差異、あるある!)

EPEでは、輸入した原材料や部品を「保税状態」で保管・使用します。つまり、税金を払わずにモノを預かってるわけです。

当然、
👉 税関に対して在庫数量をきっちり管理・報告する義務
があります。

ところが…

  • 帳簿上の在庫数と、現物在庫がズレている
  • 原材料を無断で廃棄・譲渡してしまった
  • 間違えて他事業に流用してしまった
  • こういう「ズレ」が発覚すると、
    税関から「保税違反」と認定→免除されていた税金+追徴金を払う羽目になります。

これは本当に痛いです。しかも、ベトナムの税関は抜き打ち検査をしてくるので、「見つからなかったから大丈夫」は通用しません。

💡 対策ヒント

  • 入出庫管理
  • 毎月棚卸をする(できれば第三者監査も)
  • 廃棄・不良品の処理も必ず書類化
  • ERPや在庫管理システムを使ってリアルタイム管理する

オンザスポット取引での手続き忘れ

「EPEと国内企業の現場渡しだから、通関しなくてもいいよね?」

これ、絶対にダメです!

政令35/2022/ND-CPでは、
👉 オンザスポット取引も「形式上の輸出入」として扱う
と明記されています。

つまり、

  • EPEは「輸出申告」
  • 国内企業は「輸入申告」

をそれぞれしなきゃいけないんです。

これを怠ると…

  • 国内販売分に課税されてしまう
  • さらにペナルティ(遅延申告罰金)を受ける
  • 最悪、税制優遇そのものを取り消されるリスクも

💡 対策ヒント

  • オンザスポット取引専用の通関フローを社内で作る
  • 国内取引でも「とりあえず申告!」を徹底する
  • サプライヤーや顧客にもきちんとルールを説明しておく

輸出比率が下がりすぎ問題

EPEは、「輸出加工企業」です。
名前の通り、基本は輸出専用です。

ところが、
国内市場が好調だったりすると「国内にも売っちゃおうかな〜」という誘惑が出てきます。

このとき注意しないと、 👉 輸出比率が落ちすぎて、「EPEじゃないでしょ?」と税務署に言われるリスク
が出てきます。これも時期とか担当官によって異なる見解がありそうです。

もし認定取り消しとなれば…

  • これまでの輸入免税が無効にされ、過去分まで追徴課税
  • 将来の税制優遇も受けられない
  • 社内外の信頼失墜

という三重苦が待っています。

💡 対策ヒント

  • 年間輸出比率を常にモニタリングする
  • 国内販売計画は必ず税理士・コンサルと相談する
  • 最初から国内販売も想定するなら、EPEではなく通常企業で進出を検討する

 設備更新時の「中古設備」の扱い忘れ

意外と盲点なのが、
👉 古くなった設備をどう処分するか問題です。

政令35では、EPEが中古設備を国内市場で売却できることが明記されています。条文は 第26条第4項c です!「EPEが中古機械・設備などを国内販売できることを公式に認めた」という点で、かなり実務的な柔軟性を持たせています。

ただしその際、輸入関税+VATを納付しなければならないルールです。これを忘れて無申告で中古機械を売却すると、

  • 本体価格に対して高額な罰金
  • 最悪、脱税と見なされる こともあります。

💡 対策ヒント

  • 中古設備を売るときは必ず税関と相談
  • 事前に「中古売却時に必要な税額」を見積もっておく

まとめ

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

輸出加工企業(EPE)は、

  • 関税・VATの免除
  • 国内仕入れでもVAT0%
  • 海外向けビジネスを加速できる

…という、本当に大きなメリットがいっぱいです。

でも、表面的な「お得感」だけに飛びつくと、後から思わぬリスクに悩まされることもあります。

  • 保税倉庫のミス
  • オンザスポット取引での手続漏れ
  • 国内販売比率が上がりすぎる問題

これらは、EPE運営においてリアルによく起こる落とし穴です。

だからこそ、EPEを「武器」にできるか、「負担」にしてしまうかは、👉 スタート前の理解と設計次第だと思います。

家を建てるとき、最初にしっかりした設計図を引くのと同じですね。