こんにちは!マナラボの菅野です。
今回は、**2025年7月1日から正式に施行された通達「69/2025/TT-BTC」**についてお話しします。
この通達は、ベトナムで2024年に改正された新しい付加価値税法(2024年版)と、それを実際にどう運用していくかを定めた政令181/2025/ND-CPをベースに作られた、いわば**“実務対応マニュアル”**のような位置づけです。
すでに施行されているので、これは「これから変わる」話ではなく、**“もう今この瞬間から変わっている”**ということ。
にもかかわらず、
- 「これってうちの業務にどう関係あるの?」
- 「非課税かどうか、何を出せばいいの?」
- 「外国からサービス受けたけど、VATってどう処理するの?」
といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、会計・税務の現場に直結する“実務に関係あるところだけ”を厳選し、
しかも、構造・条文・背景を整理したうえで、わかりやすくお届けします。
「自分の業務に関係あるかどうか」を判断できるようになるためにも、ぜひ最後までご覧くださいね。
この記事のもくじ
1. 通達69/2025/TT-BTCとは?
この通達は、ベトナムで2024年に改正された付加価値税法2024(新VAT法)と、その実施ルールを定めた政令181/2025/ND-CPの内容を実務で使えるように細かくガイドしたものです。
つまり、「この取引って非課税?」「還付には何の書類が必要?」
というような**実務での疑問に答えてくれる“運用マニュアル”**のような通達です。
そして、重要なポイントがこちら👇
📌 施行日:2025年7月1日
📌 この通達は、以下の古い通達を置き換えて廃止しています(第10条より):
廃止された通達 | 内容 |
---|---|
通達219/2013/TT-BTC | 旧VAT通達の基本 |
通達193/2015/TT-BTC | 上記の修正通達 |
通達173/2016/TT-BTC | VAT控除関連 |
通達82/2018/TT-BTC | 特定の例示の削除 |
通達43/2021/TT-BTC | 0%税率の修正 |
通達13/2023/TT-BTC | 政令49/2022の運用通達 |
2. 通達の構造とカバー範囲【図解つき】
この通達は、全部で10条+附属書で構成されています。
条番号 | 内容の概要 |
---|---|
第1条 | 適用範囲(Scope of regulation) |
第2条 | 適用対象者(Applicable entities) |
第3条 | 課税対象・非課税対象の識別(Identification of taxable and non-taxable goods and services) |
第4条 | 0%税率の適用条件と手続き(Application of 0% VAT rate) |
第5条 | 非課税取引の証憑・書類(Documents for non-taxable items) |
第6条 | 外国企業・非居住者に代わるVAT納付に関する証憑(Documents for VAT paid on behalf of foreign entities) |
第7条 | 輸出取引にかかるVAT還付計算(Refund for exported goods and services) |
第8条 | 5%税率対象取引のVAT還付方法(Refund for 5% VAT items) |
第9条 | 定率課税の適用ルールと計算(Percentage-based VAT calculation) |
第10条 | 施行日、旧通達の廃止、経過措置など(Entry into force and transitional provisions) |
それぞれの条文が、付加価値税法2024のどの条文と関係しているかも整理してみました👇
通達69/2025/TT-BTCの構造と付加価値税法2024との対応
ここで注目してほしいのは、
通達の各条文が「法律で定められた原則」に対応する実務ルールになっている点です。
たとえば:
- 非課税かどうかの判断方法(第5条) → 法第5条に基づく具体書類が明記
- 0%税率の適用手続き(第4条) → 法第9条を現場でどう証明するか
- 外国人に代わって納付したVATの処理(第6条) → 法第14条の実務化
- 控除方法の詳細(政令181 第20条) → 税務署が見る観点がここでわかる!
3. 押さえるべき4つのポイント
3.1 非課税かどうかの判定方法(法第5条)
「非課税だからVATかからないでしょ?」
実はそれ、証明できないとNGです。
通達第5条では、以下のようなケース別に証憑が必要とされています。
ケース | 必要書類 |
---|---|
家畜の販売 | 飼育記録+品種証明 |
教科書・法律書などの輸入 | 出版物輸入許可書 |
援助物資の受入 | 外国機関からの非返還援助証明書 |
知財権の譲渡 | 登録証明書+譲渡契約書 |
📌 ポイントは、「非課税対象品でも“証明書類がなければ課税対象になる”」ということ!
3.2、 0%税率の適用条件(法第9条)
0%税率の対象になるには、**「輸出」「外国向け取引」かつ「証憑が揃っている」**ことが必須です。
必要な書類は、通達に明確に書かれています:
- 契約書(外国企業と)
- インボイス(売上証明)
- 非現金支払証憑(銀行振込など)
- 通関申告書、B/L、梱包明細など
これが揃わないと、0%じゃなくて10%課税扱いになる可能性あり⚠
3.3 定率課税(%方式)の注意点(法第12条)
売上に一定の率をかけてVATを計算する定率方式。
ここで重要なのが「売上区分ができないと最高税率が適用される」というルール。
たとえば:
商品 | 税率 |
---|---|
A商品 | 2% |
B商品 | 5% |
売上を区分できないと → 全部に5%がかかります
📌 売上帳やインボイスの分類はしっかりと!
3.4 外国企業の代納に関するVAT控除(法第14条)
たとえば、外国サプライヤーからクラウドサービスを買ったときに、
ベトナム法人が代わりにVATを納めることがあります。
その場合も、以下のような証憑があれば仕入税額として控除可能:
- 納税証明書(税務署発行)
- 外国企業との契約
- 非現金での支払い証明
4. VAT控除のルール(政令181 第20条)
VAT控除は、以下の式で計算されます。基本ですね。
控除できるInput VAT(仮払付加価値税)には、次の条件があります:
- VAT付きインボイスの保有
- 非現金支払い(銀行送金、相殺、社員立替など)(紙のお金じゃだめってこと)
❌ 現金で直接支払ったものはNGになるケースが多いので注意!
📌 実務では「社員立替→会社が銀行で返金」も非現金とみなされる場合があります(規定と証憑が必要)
表でまとめますね。
ポイント番号 | 内容 | 通達69/2025/TT-BTCの条文 | 対応法令・条文 | 条文の日本語訳(抜粋) |
---|---|---|---|---|
3.1 | 非課税かどうかの判定方法 | 第5条 | 付加価値税法2024 第5条 | 第5条:付加価値税が課されない対象には、家畜の品種、生産用作物、未加工の水産物などが含まれます。 |
3.2 | 0%税率の適用条件 | 第4条 | 付加価値税法2024 第9条 | 第9条:0%の税率は、輸出される商品やサービス、国際輸送、輸出時に非課税となる商品・サービスに適用されます。 |
3.3 | 定率課税(%方式)の留意点 | 第9条 | 付加価値税法2024 第12条第2項b号 | 第12条第2項b号:売上に対するパーセンテージでVATが課される商品・サービスのグループは、本通達の附属書に規定されます。 |
3.4 | 外国企業の代納VATの控除 | 第6条 | 付加価値税法2024 第14条第2項a号 | 第14条第2項a号:ベトナムに恒久的施設を持たない外国組織・個人に代わってVATを納付した場合、その証明書があれば控除対象となります。 |
4 | VAT控除の計算ルール | 該当なし(政令) | 政令181/2025/ND-CP 第20条 | 第20条:納付すべきVAT額=売上VAT − 控除可能な仕入VAT(政令の第III章に定められた条件を満たす必要あり)。 |
5. この通達の適用対象者は?
通達第2条では、次のように定められています:
- 政令181/2025/ND-CP 第3条に記載された納税者すべて
- 税務機関
- 関係する組織・個人
つまり、ベトナムでVAT関連取引を行う事業者は、基本的にすべて適用対象と考えてください。
6. 実務対応チェックリスト✅
チェック項目 | 確認できてる? |
---|---|
非課税対象に必要な証憑を整備しているか | ◻ |
0%税率の証拠書類が揃っているか | ◻ |
定率課税の売上が区分できているか | ◻ |
社内で非現金支払い証明の運用ルールがあるか | ◻ |
外国企業に代わって支払ったVATを控除できているか | ◻ |
まとめ:通達69号は“変化”じゃなく“整備”
今回の通達は、「新しいこと」が増えたというよりは、
これまで慣習的にやってきたことを、証拠に基づいてちゃんとやってねというメッセージだと感じています。
ですので、ぜひこの機会に、
- 書類管理のルール見直し
- インボイスと支払証憑の紐付け
- 社内マニュアルの改定
などを検討してみてくださいね!
もし「この取引、非課税になるの?」「外国クラウドにVATかかる?」など
具体的な相談があれば、お気軽にご連絡ください😊
ではまた、次回の記事で!
— すげの(ManaLab)