こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。

ベトナムに進出している日系企業様、実務上、日本本社の社長が、ベトナムの社長も兼ねるということがありますよね。

実際問題、場合によっては本社の社長が、1日もベトナムに来ないというケースもあるかもしれません。名義だけ本社社長にしておいて、実際の経営業務は他の人に任せるという場合ですね。

実務上は、出張ベースで月に数日来る場合が多いという印象です。

原則、1日もベトナムに滞在していない場合、ベトナムで個人所得税を支払う義務はありません。しかしながら、この場合であっても必ずベトナム個人所得税の論点が登場します。

本日は、社長(General Director)がたとえ日本にずーっと滞在していたとしてもなぜ個人所得税が論点になるのか?ということを解説していきます。

ベトナム税務調査時の大きなサプライズを避けることができますよ。

なぜ、ベトナムの社長は個人所得税を支払う必要があるのか?

なぜ、たとえベトナムに滞在していなくてもこの論点が生じるのでしょうか?

社長の名前と住所がERCに記載されているから

です。なおERCの定義は以下の通り。

>>どこよりも詳しく、ベトナムERC(企業登録証明書)を徹底解説してみた! 【保存版】

ベトナム企業統一法には以下の規定があります。

第 13 条 企業の法定代表者

3. 企業は,少なくとも一人のベトナムに居住する法定代表者を常時確保しなければならない。

ベトナムに“居住”(常駐)しなければならないと規定されていますね。これは、ベトナムに住所を持たないといけないという理解でよろしいかと思います。

通常、法定代表者は社長(GD)がなる場合がほとんどです。

したがって、社長(GD)が、「ベトナムに住んでいないですよ!」ということが説明できなくなってしまうのですね。

すなわち、社長(GD)であるにも関わらず、個人所得税を払っていないということが法律上の整合性の観点からありえないということになってしまうのですね。

そもそも“居住”の意味ってなに?

上述のように、法的代表者は、居住する必要があります。しかしながら、居住の定義が明確ではありません。何日以上いなければいけないという決まりも規定はされていません。

ベトナム税務に詳しいあなたなら、税法上の“居住者”を想像してしまったのかもしれません。しかし、上記の企業法上の居住とは、厳密にいうと同意義ではないようです。曖昧なんですね。

税務上の居住者については、以下をご参照ください。

>>ベトナム税金 コラム第6回「個人所得税 居住者・非居住者判定」2

>>ベトナム税金 コラム第7回「個人所得税 居住者と非居住者の計算方法の違いは?」

しかしながら、ERCについては法的代表者の現住所を記載しますよね。この時、上記の関係から、ベトナムの住所を登録することがあると思います。

そうしますと、“恒久的住所があること”に該当し、税法上も“居住者”と判定される可能性がゼロではないことになります。

しかし、日本で「居住者証明書」を持っていれば非居住者と認定されることが可能です。つまり、税法上、非居住者として認定できることになります。

その他のベトナムの税務上の法律根拠

また、税務上の通達No. 205/2013/TT-BTCにも定められているようです。ベトナムにおける租税条約のガイドラインのようです。

Article 33. Definition of tax obligation for income from directors’ fees

Under the Agreements, individuals who are residents of the Contracting State to an Agreement concluded with Vietnam receive remuneration in the capacity as members of Board of Directors, Managing Board or as senior managers of a company being a resident of Vietnam shall pay tax on such type of income in accordance with the regulations on individual income tax in Vietnam (regardless whether they are present in Vietnam or not)

引用元:No. 205/2013/TT-BTC

ベトナムに住んでるかどうか?関係ないって言ってるんですよね。

ベトナムの税務調査で指摘されやすい箇所

外資系企業である日系企業を、税務調査する場合、どうしてもベトナム個人所得税が注目されてしまいます。

なぜならば、簡単に指摘できる論点ですし罰金等で多額になる可能性が高いからです。

それでは、どのようにチェックするのでしょうか?

例えば、ERC(企業登録証明書)には社長の名前が記載されています。

この場合、その人の個人所得税がきちんと支払いされているか?と言うチェックが可能となりますよね。とても、簡単なチェック方法です。

ポイントとしては、日本人の名前が記載されている書類があるかどうか?と言う点です。

この場合には、注意しなければいけません。

本日のまとめ

本日は、ベトナムの個人所得税の論点のお話でした。

ベトナムの社長は、ベトナムに居ようがいないが、所得税の論点が発生する

もし、あなたのベトナムの会社の書類上の社長が本社の社長で、個人所得税を申告していない。ということがあればそれは要注意です。かならず確認してください。

あなたの会社が、個人所得税の件で多額な損害を防止できることを祈っていますね。

それではまた!