こんにちは、マナボックスの菅野です。

この記事はこんな人のために書いています。
  • 我々は、監査法人から“監査”を受けているから税務上も心配ない。と思っている。
  • ベトナムの監査の種類についての概要を知りたい
  • 影響の概要を知りたい。

「うちは、毎年、監査をうけているから、ベトナム税務の問題はないよ。」

ベトナムでお仕事をさせて頂いていると、このような言葉を聞くことがあります。しかも、結構あります。

しかし、これは正しくありません。

本日は、このような勘違いが起きないように整理していきたいと思います。

以下では、会計監査と税務調査との違いを解説しています。

ベトナムでよくある監査・調査は以下の3つです。

  • 会計監査
  • 税務調査
  • 税関調査

それぞれ以下の観点から解説していきますね!

  1. 対象会社は?
  2. 誰が、監査・調査するの?
  3. 目的は?
  4. 必要な主な書類は?
  5. 期間は?締め切りは?
  6. 監査・調査の成果物は?
  7. 根拠条文は?

①対象会社は?

どんな会社が対象となるのでしょうか?

会計監査

外資系の会社は、監査を受けなければいけません。つまり、日系の会社は、会計監査の対象となります。

その他、ローカル資本でも上場しているような一定の会社は監査を受けなければいけません。

税務調査

すべての個人事業主を含む会社です。ローカル会社も含まれます。

どんな会社が調査されやすいか?という傾向もあります。

  • ずっと赤字で、法人税を支払っていない。
  • 申告や支払いの遅延
  • 税務額の滞納
  • 頻繁に税務申告の修正
  • 関係会社間取引がある。

このような会社は税務調査が入りやすいようです。

税関調査

輸出入している会社であれば監査が入る可能性があります。特にEPEやNon-EPEは関係ありません。

②誰が監査・調査するの?

それでは、いったい誰が、監査・調査するのでしょう?

会計監査

これは、いわゆる監査法人という組織が実施します。会計監査のライセンスを持っている組織ですね。

税務調査

MOF(財務省)管轄のGDTという組織が管理してます。General Department of Taxationの略です。

日本語でいうと、税務総局です。

またその管轄化である地方税務局が、税務調査を実施します。

例えば、ハノイ、バクニン、ハイフォン税務当局です。日系企業等の外資系は、この地方税務局から調査を受けます。

一方で、ローカル会社は、その下である地区税務局が担当します。例えば、コーザイとかバーディン地区の税務局です。管轄が違います。

余談ですが、ローカルから外資系に移行した会社も、地区税務局が担当するようですね。

税関調査

MOF(財務省)管轄のGeneral Department of Customsという組織が管理してます。税関総局ですね。

税関総局管轄下による、税関局Custom department が担当します。

これもリスクが高い判断された会社は調査されやすいようです。

③監査・調査の目的は?

これ大事です!きちんと整理していきましょう!

会計監査

正しい会計情報(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を、作成しているか?です。

利益金額正しいの?資産は本当に存在している?というような感じです。

逆に言うと、税務的な視点は、基本的にはありません。

税務調査

課税の公平性です。

税務申告書が正しいか?個人所得税を支払っているか?申告が遅延してないか?

損金生あるのか?など。もっと言うと、税務担当官は、追加で税収を徴収するためにミスを探しに来るという感じです。

参考記事:>>“損金不算入”ってなんだ?

税関調査

関税の法律に準拠しているか?どうか?です。

具体的に言うと……。

関税を正しい関税のレートに基づいて支払っていますか?

とか不正に国内で販売していませんか?であれば、それについて関税を適用しますよ?

という視点です。

参考記事:>>ベトナム、“在庫差異”には気をつけろ!

④必要な書類は?どんな書類が調査される?

どんな書類が必要なのでしょうか?

会計監査

主には、会社の基礎情報及び財務諸表です。

税務調査

主には、会社の基礎情報及び関連する財務データ、税務申告書です。

税関調査

主には、会社の基礎情報及び関連する財務データ、関税申告書です。

⑤監査・調査の成果物は?

監査または調査の結果、どのような成果物が提出されるのでしょうか?

会計監査

監査報告書というものが最終成果物です。

これに対して、監査法人は意見を述べます。

あなたの会社の財務諸表は正しいですよ。というのあれば無限定適正意見というのが出されます。

一方で、正しくないよ。というのであれば、限定付適正意見や不適正意見などが出されます。

提出場所は、3つです。1)財務局2)税務局3)統計局です。

なので、GDは署名活動が大変です。ものすごい数のサインが要求されます。

税務調査

税務調査の結果、担当官は主に以下の書類を作成します。

  • 結果報告の税務調査議事録(税務担当官による税額の再計算ロジックも添付)
  • 最終の追徴課税、利息の通知

税関調査

税務調査の結果、担当官は主に以下の書類を作成します。

  • 結果報告の関税調査議事録(税務担当官による税額の再計算ロジックも添付)
  • 最終の罰金等の通知

⑥期間は?締め切り日は?

いつまでに監査、調査を完了させる必要があるのでしょう?

会計監査

決算日から90日後です。3ヶ月後ですね。会計年度ごとに必要です。

12月決算であれば、3月末までです。したがって、2月くらいが監査で忙しいイメージです。

税務調査

頻度は、5年に一度と言われていますが、状況によって異なります。

  1. 税務調査の決定の通知:企業は少なくとも3日前に通知されなければなりません。(Tax examination)。 15日前(Tax inspection)。
  2. 調査の期間:最大期間は10日(Tax examination))です。 最大期間は30日-45日程度(Tax inspection)
  3. 結果報告:検査終了後5日以内-検査終了後15日以内

税関調査

  1. 税務調査の決定の通知:企業は少なくとも3日前に通知されなければなりません。(Tax examination)。 15日前(Tax inspection)。
  2. 調査の期間:最小期間は10日であり最長については、規定上は定められていない。
  3. 結果報告:検査終了後5日~15日後程度に提出される。

⑦根拠条文は?法令は?

それぞれ、根拠条文、規定があります。

会計監査

Independent audit law (67/2011/QH12)
Accounting Law (88/2015/QH13)
等です。

税務調査

Tax Administration Law 78/2006/QH11
Decision 1404/QD-TCT 2015 and 2605/QD-TCT
Decision 746/QD-TCT 2015

関税監査

Tax Administration Law 78/2006/QH11
Customs Law 54/2014/QH13
Decision 4129/QD-TCHQ 2017

 

★本日のまとめ★

簡単に表でまとめると以下の通りになります。

 会計監査税務調査関税監査
①対象

外資系

その他もあり

すべての会社輸出入している会社
②誰が実施?監査法人税務局

税関局

③目的は?正しいFS公平な課税

税関額の徴収

④書類

財務データ

財務データ

申告書

財務データ

申告書

⑤成果物は?

監査報告書

MOM

最終通知書

MOM

最終通知書

⑥頻度、期間

毎年

90日

5年に1度程度

1か月程度

会社による 5年に1度程度

最長のとりきめなし

実務上は1か月以上

 

⑦根拠条文

 

  • Independent audit law (67/2011/QH12)
  • Accounting Law (88/2015/QH13)
  • Tax Administration Law 78/2006/QH11
  • Decision 1404/QD-TCT 2015 and 2605/QD-TCT
  • Decision 746/QD-TCT 2015
  • Tax Administration Law 78/2006/QH11
  • Customs Law 54/2014/QH13
  • Decision 4129/QD-TCHQ 2017

きちんと整理することによって、心構えも変わってきます。対策もですね。

あなたの会社が、ベトナムの監査、税務調査、税関調査を正しく理解することによってサプライズ罰金を防止することを祈っていますね。