こんにちは、すげのです。

この記事はこんな人のために書いています。
  • ベトナムに日本本社から駐在している。
  • ベトナム給与が損金算入されるか?心配
  • 任命書で大丈夫だと思っているが、心配

こんな疑問にお答えしていきます。

No: 5200/ TCT- DNNCNというオフィシャルレターが発行されました。

 

2019年12月12日、税制に関するオフィシャルレター No.5200/TCT-DNNCNがベトナム税務当局によって発行されました。

項目は1~10個あってそれぞれ内容が違います。

注目せざるを得ない文言がありました。ただ、結論は、

当たり前のことを、言い直しているだけ。

だけだと認識しています。

着目されている文言は以下です。

法人所得税に関する規定によれば、外国人労働者の任命書(アサイメントレター)は、外国人労働者に対して支払った給与及び賃金を、損金算入費用として証明する書類であるとは規定していない。

え!え~!どういうこと?

この文言だけ見れば、任命書だけ準備しても、損金算入できないよ!っても読み取れますよね。

No: 5200/ TCT- DNNCN

Based on the provisions of the law on corporate income tax, the recognition of appointment letter as a document proving that the calculation of wages and remuneration of the enterprise is not included in the current regulations.

矛盾していませんか?じゃあ、社会保険の加入は全員ってこと?

以前、出向者については、社会保険に加入する必要がないという規定がでました。No 143/2018 / ND-CPで、“社内異動者”は、社会保険料は支払う義務がないとされました。

税務VS 労働法

その際、税務VS 労働法という論点が生じていました。以下のようなイメージです。

≪税務担当官の主張≫→損金算入したいなら、きちんと「労働契約書」もらってないとダメでしょ。認めないよ。

≪労働法(社会保険など)側の主張≫→「労働契約書」あるなら、ベトナムでの雇用です。社会保険も入ってよね!

以下リンク先でも解説しました。

>>ベトナムで日本人駐在員の給与が”損金算入”されるために必要な2つのこと。 出向契約書か労働契約書?社会保険加入にも影響

オフィシャルレターでは、要件の満たした「任命書」があれば、損金算入と認めていたはず

上記のリンクに記載していますが、労働契約書が必至でなくて、「任命書」(アサイメントレター)であれば、損金算入可能でした。

でも今回の5200/TCT-DNNCNで、そもそもダメみたいな文言がみつかったのです。

オフィシャルレターには戦闘力みたいなものがある

オフィシャルレターですが、意見が異なることはあるようです。

税務当局が回答していますし、担当者も違うはずですからね。ありえそうです。

このオフィシャルレターですが、どのレベルが?回答したかによって強い、弱いがあります。ドラゴンボールの戦闘力みたいな感じですかね。スカウターで測定できるものでした。

どちらが正式に適用されそうか?とも理解できます。これまでの関連のオフィシャルレターは以下のようになっています。

オフィシャルレター

結論どこが?

5200/TCT-DNNCN

任命書は、法人税法上に規定さていない。

税務総局(GDT)

1198/CT-TTHT

要件を満たした任命書であれば損金算入ができる。ハノイ市税務局

Official Letter 13276/CT-TTHT

ホーチミン市税務局

このうち着目すべき点は、誰が?という部分です。

税務総局は、地方の税務局より上の機関です。

ということは…。

強い!ってことです。

したがって、「任命書」だけだと、ベトナムの給与は損金算入が認められない考えられます。

あなたは、どんな選択肢があるのか?

このような状況のもと、駐在員(出向者)として、どのような選択肢があるのか?検討していきたいと思います。

選択肢は、以下があると思っています。

①OL5200/TCT-DNNCNに基づき、「労働契約書」を作成し、損金性を重視⇒社会保険は入る(ただ掛け捨てみたいなってしまう可能性が大きい)

②労働契約書は作成しないけど、十分な「書類」を作成⇒社会保険に入らない。⇒給与の損金不算入の可能性はゼロじゃない。(ベトナムなので100%がそもそもないですが。)

表にすると以下のような感じになると思います。具体的にザックリ金額を持ってイメージしてみましょう。

ハノイ太郎:A:日本給与500万円、B:ベトナム給与200万円、C:グロスアップの会社負担分300万円

選択肢

法人税という視点

社会保険料

労働契約書作成

B:ベトナム給与200万円

C:グロスアップの会社負担分300万円

が損金性について安心。

社会保険には加入。

2021年12月までは約6万円(年間)

2022年1月からは、約42万円(年間)

※最低賃金が上がればこれも増加します。

労働契約書なし。「十分な書類」

B:ベトナム給与200万円

C:グロスアップの会社負担分300万円

万が一、よくわからない税務担当官の理不尽な指摘(労働契約書にこだわる人)により、損金不算入なら、500×20%の100万円のキャッシュアウト

社会保険には加入しない。

支出ゼロ

悩ましいかと思います。私なら、後者を選択しますけどね。(個人的な見解ですので、正解はありません。)

ここで、十分な書類としているのは、給与の損金性については、”労働契約書”だけが必要な書類とは考えられないからです。これは、通達でもそれは読み取れますよね。

例えば、通達に以下の記載されていますし、「出向契約書」「覚書」を準備することが実務では多いです。

No. 96/2015/TT-BTC

2. The expenses below are not deductible when calculating taxable income

2.6

b) Wages, bonuses, life insurance premiums for employees that are not specified in one of the following documents: ① employment contract, ②collective bargaining agreement, ③financial regulation of the company, ④general company, ⑤corporation, reward scheme issued by the President of the Board of Directors, General Director, or Director in accordance with the financial regulation of the company or general company.

したがって、冒頭で申し上げた通り、今回のOLは、当たり前のことを言っているのだけなのもしれません。

「法人税上の規定に、任命書なんて、記載していませんよ」って言ってるだけですのでね。

そりゃそうだねって話です。

駐在員の給与をどんな風に明記するか?のまとめ

上記と被るところもあるのですが、以下のように表にしてみました。

STT書類No. 96/2015/TT-BTC記載あり?社会保険の論点損金性備考
1Labor agreement/労働契約書

✖⇒生まれる。

加入しろ!となる。

 
2Collective bargaining agreement/団体交渉協定・生まれない
(労働契約書の基本的内容を含めた方がベター)
駐在員の場合は該当なしかと思います。
3Financial regulations of the Company, Corporation, Group/会社の規則上記と同様 抽象的
4Assighment letter/任命書上記と同様

OL5200の内容
(法人税の規定に含まれていないですって書いてある。)⇒3とか6に含まれそうな気もします。

実務でよくあり。

5Secondary agreement/出向契約書上記と同様

6に含まれそうな感じもします。

実務でよくあり。

6The reward policy is prescribed by the Chairman of the Board of Directors/ 報酬のポリシー上記と同様 

★本日のまとめ★

  • 5200/ TCT- DNNCNというオフィシャルレターが、2019年12月12日に出された。
  • これよれば、「任命書」は法人税の規定にそもそもないって記載してある。
  • ということは、「任命書」だと損金不算入だと読み取れる。
  • ただ、そもそも損金性っていう意味では、「労働契約書」だけだと言っていない。
  • 実務上はリスクを勘案して、判断することになる。なぜならば、100%正しいという事がなく、サプライズの可能性が常にあるから。

ベトナムっぽいオフィシャルレターですね。 

矛盾はよくあるかなという印象です。 

このあたり、判断で悩んでしまうかと思います。

今日のお話が役にたてれば幸いです。

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