こんにちは、マナボックスベトナムの菅野(すげの)です。
- ベトナムに子会社がある
- 社長(GD)に就任している
- ベトナムにおいて社長とも労働契約書を作成しようと思っている
この様な場合の労働契約書においての雇用者についてどう記載するか?について解説します。
この記事のもくじ
ベトナムにおいて、社長と社長が労働契約を結べるのか?
ベトナムに子会社を設立した場合、通常、日本人駐在員が、社長(GD)に就任します。そして、労働契約を締結することがあります。なぜならば、給与等の駐在員の費用の損金算入のために必要な条件という風潮が強いからです。以前は、労働契約書でなくて、任命書等の準備で、労働契約書を締結することも少なかったのです。
そして、労働契約書には、雇用者と被雇用者の名前を記載する必要があります。例えば、マナボックスベトナムの社長は私ですので、仮に、Trangさんを採用したら、私(会社の代表者)とTrangさんの名前が記載されます。ベトナムの企業統一法によって、これは社長(GD)の権限だとされています。
>>ベトナムの労働契約書を徹底解説!合計5条から構成される必須の10項目とは?
そして社長(法的代表者)、以下のような疑問が生まれます。
社長と社長ができるの?雇用者と被雇用者と同じって違和感ある!
ベトナムの法令上は?民法に定めあり
この点、社長、法的代表者と労働契約する場合には、問題があるそうです。
本人に代わって、本人または本人との間で民事取引を行ってはならない。
つまり、社長、法的代表者と労働契約を締結することはできないと考えられます。
以下が根拠条文です。
term 3, article 141 Civil law 2015
3. A natural or juridical person may represent multiple natural or juridical persons but he/she/it may not, on behalf of the principal, enter into and perform a civil transaction with him/her/it or with a third party that he/she/it also acts as a representative therefor, unless otherwise prescribed by law.
3. 自然人又は法人は、複数の自然人又は法人を代表することができる。
本人に代わって、本人または本人との間で民事取引を行ってはならない。
代理人を兼ねている第三者との間で、別段の定めがない限り、その代理人となっている場合。
では、どうやって「労働契約書」に記載するのか?
昨今、駐在員の給与関係の損金算入の可否という点で、「労働契約書」はとても重要です。そして、その有効性も大事かと思います。なぜならば、「この労働契約書は、法的要件満たしてないから、損金不算入ね」って言われそうだからです。もちろん、その可能性は、かなり小さいかと思います。
日本人駐在員の社長と労働契約を締結する場合には、以下のようにします。つまり、雇用者を社長以外にできます。
■選択肢1
出資者である日本の親会社を雇用主とする
■選択肢2
会長が雇用主となる
以下のイメージですかね。
以下が根拠条文です。統一企業法ですね。
>>ベトナム統一企業法の会社進出形態の種類を整理する 【まとめ記事】
第 81 条 社長,総社長
1. 社員総会又は会社の会長は,会社の日常的な経営活動を運営させるため, 社長又は総社長を 5 年を超えない任期で任命又は雇用する。社長又は総社長 は,自己の権限の行使及び義務の履行について法令及び社員総会又は会社の 会長に対して責任を負う。社員総会の会長,社員総会のその他の構成員又は 会社の会長は,社長又は総社長を兼ねることができる。ただし会社の定款に 異なる定めがある場合を除く。
第 85 条 個人により所有される一人社員有限責任会社の管理組織機構
- .個人により所有される一人社員有限責任会社は,会社の会長,社長又は総 社長を有する。
- 会社の会長は,社長又は総社長を兼任し,又は雇用することができる。
- 社長又は総社長の権限,義務は,会社の定款,社長又は総社長が会社の会長と締結した労働契約の定めに従う。
引用元;ベトナム統一企業法
表にまとめるとわかりやすいと思います。
会社の形態 | 会社の機関 | 雇用主 | |
1人社員有限会社 | 会長のみ | 会長が法的代表権なし | 会長が有する |
会長が代表権あり | 出資者(日本の親会社で代表取締役の押印) | ||
社長と会長が兼任の場合 | 出資者(日本の親会社で代表取締役の押印) | ||
社員総会あり | 会長が有する | ||
2人以上有限会社 | 社員総会あり | 会長が有する |
日本の場合は?取締役は、雇用契約ではく「委任契約」となる
では、日本の場合はどうでしょう?代表取締役の雇用契約書はあるのか?誰がサインするのか?という点です。
結論は、雇用契約書でなく、「委任契約書」を締結します。つまり、会社と取締役との間での契約書です。そのため、上記の様な論点がそもそも生じません。
ちなみに、日本でも自己契約は、原則として禁止されています。
本日のまとめ
本日は、ベトナムにおける労働契約書で社長の場合はどうなるのか?という点で解説させて頂きました。
- 昨今の流れから、社長でも労働契約書を締結する場合ば多くなってきた(損金の可否)
- 社長と社長は労働契約を締結すると民法上禁止(雇用者と雇用主は同じ人ではだめ)
- ベトナム統一企業法に定めあり。会長を雇用主にする。また、出資者を雇用主とする場合もあり。
- 労働契約書が無効になると、損金性の問題に波及するかもしれない
留意していただけると幸いです。最終的な判断、確認は、お世話になっている専門家に確認することをお勧めします。必ず、確認してくださいね。
それでは、また!