こんにちは、マナボックスベトナムの菅野です。

本日は、ベトナムの法人税優遇税制についてのお話です。2020年の7月3日に新たに公布された通達13/2020/TT-BTTT(情報通信省が発行)についてです。 (2020年8月19日より有効)

この通達は、通達16/2014/TT-BTTTT の改正の通達となります。したがって、比較することで理解が深まると思います。

この記事はこんな人のために書いています。

ベトナムに進出している。ベトナムでソフトウェアの開発を実施している。法人税の優遇税制の適用について気になっている。覆されるか心配。

ソフトウェア開発における優遇税制の要件の主な変更点

注目すべき変更点は以下の点かと思います。

  1. ソフトウェア開発のプロセス定義(より詳細になった)及び最低限含むべき工程
  2. 優遇税制の適用にあたっての書面や資料の種類が明記された
  3. 当局(情報通信省の情報技術室)への報告義務について

この点についてそれぞれ解説して行きます。

「ソフトウェア開発」のプロセス定義の7つとは?

ソフトウェアの開発のプロセスの工程がより詳しく定義され明確になった。

ベトナムの通達(3項)によれば、ソフトウェアの開発は、以下のプロセスに分類されます。

1.⭐️要件定義:機能、特徴、コンテキスト等ソフトウェアの要件を決めることが該当する

2.⭐️分析・設計:要件の仕様、アルゴリズムの設定等が該当する

3.プログラミング・コーディング

4.検査・テスト

5.完了・梱包

6.インストール・移送・使用案内・メンテナンス

7.配布・販売・リース

⭐️は必須で含む必要があります。例えば、3及び4だけ含んでいても、優遇税制は適用できません。

この7つには変更はありません。これがわかりやすく明確になりました。

1.要件定義

対象ソフトウェアの要件定義のアイデアや特性、使用目途、検収時の要件など以下の文言が追加されました。

ソフトウェア製品の開発に関するアイデアの作成・完成、製品の特性(要求事項)の記述、

ソフトウェア製品の要求事項の提案・調査・明確化、業務分析

ソフトウェア製品の完全な要求事項の開発、手続き調整のコンサルティング、要求事項の集約、要求事項の承認、管理能力などを行い、製品が要求事項に適合しているかどうかを判断する要求事項の決定

条文は以下の通りです。

1. Requirement determination, which includes one or multiple following operations: producing or completing ideas regarding developing software products; describing characteristics (requirements) of products; proposing, surveying, and clarifying requirements of software products; analyzing operations; developing complete requirements for software products; consulting about procedural adjustment; consolidating requirements, approving requirement, control capacity and other factors to determine compliance of the products with the requirements.

2.分析・設計

作業の分析とモジュールなどの設計とモデリングのこと。

開発時における要件定義への適合性の検証作業、分析によるソフトウェア要件の優先度やソリューションの決定。ソフトウェアの情報安全性とセキュリティの設計

具体的には以下のことについて詳細に規定されました。

具体的に要件(機能要件と非機能要件、対処すべき問題点)を記述し、開発方程式とソリューションを最適に活用するために必要な技術を検証する必要。

ソフトウェアの正当性と審査能力を分析した上で、ソフトウェア要件が運用環境に与える影響を分析。その上で、優先順位を付けて承認し、必要に応じて更新する要件をリストアップし、データモデリング、機能モデリング、情報チャネルモデリングを実施。そして、ソフトウェアソリューションを特定。

その後、ソリューションを設計し、ソフトウェアシステムを設計し、データ、ソフトウェア構造、ソフトウェアの構成単位とモジュールを設計し、ソフトウェアの情報安全性とセキュリティを設計し、顧客インタフェースを設計します。

条文は以下の通りです。

2. Analysis and design, which include on or multiple following operations: specifically describing requirements (function and non-function requirements, and issues that need to be dealt with); establishing development equation and necessary techniques to best utilize solutions; analyzing legitimacy and examination capacity of the software, analyzing impacts of software requirements on operation environment; listing requirements to be prioritized, approved and updated when necessary; implementing data modeling, function modeling, and information channel modeling; identifying software solutions; designing solution and designing software system; designing data, software structure, designing composition units and modules of software; designing information safety and security for software; designing customer interface

3.プログラミング・コーディング

ここについては大きな変更点や追加はありません。

プログラミングとコーディングは、次の操作の1つまたは複数を含む必要がある:

  • プログラミングソフトウェア、
  • ソフトウェアのプログラミングユニットとモジュール、
  • ソフトウェアの調整、カスタマイズと修正、
  • ソフトウェアのコンポーネントを統合し、ソフトウェアシステムを統合。

条文は以下の通りです。

3. Programming and coding, which include one or multiple following operations: programming software; programming units and modules of software; adjusting, customizing and modifying software; integrating software components; integrating software system.

4.検収及びテスト

ソフトウェアの安全性に関する文言が追加されました。

ソフトウェアの検査と実験は、次の操作のいずれかまたは複数を含む:

ソフトウェアのユニットとモジュールの実験。検証。シナリオの開発・テスト。ソフトウェアの機能を実験し品質も評価。

そして、エラーの可能性を評価し、ソフトウェアの情報の安全性とセキュリティを検証し、顧客の要件の満足度を確かめる。

条文は以下の通りです。

4. Software examination and experimentation, which include one or multiple following operations: developing testing and experimenting scenarios of units and modules of software; testing software; experimenting software; experimenting software functions; appraising software quality; assessing error possibilities; experimenting information safety and security of software; verifying satisfaction of customers’ requirements; inspecting software.

5.完了・梱包

ソフトウェアの完了や、知的財産権等の登録、マニュアル添付についての記載。ここについては大きな変更はありません。

ソフトウェア製品の完成・梱包作業:ソフトウェア製品の説明書、インストールマニュアル(製品を一括して譲渡する場合)、ソフトウェア製品のマニュアル(サービスを利用する人や雇う人向け)の作成、ソフトウェア製品の梱包、モデルの登録、知的財産権の登録などの作業を含む。

条文は以下の通りです。

5. Software product completion and packaging, which include one or multiple following operations: developing documents on software product description, installation manuals (in case of total product transfer), software product manuals (for persons using or hiring services); packing software products; registering models; registering intellectual property rights.

6.インストール・移送・使用案内・メンテナンス

納品形態について、

  • パッケージ型
  • 貸与型

の文言が追加されたようです。

ソフトウェア製品の設置、譲渡、指示(インストラクション)、保守のうち、次のいずれかまたは複数の業務を含むもの

  • ソフトフトウェア製品の譲渡(製品全体または製品使用権の貸与の場合)、
  • インストールの指示(製品全体の譲渡の場合)、
  • ソフトウェア製品のインストール(製品全体の譲渡の場合は顧客のシステムに、ソフトウェア製品の貸与の場合はサービス提供システムに)、教育・指導(サービスを利用する者、雇う者)、
  • 譲渡後のソフトウェア製品またはサービス提供システム上のソフトウェア製品の検討、
  • 譲渡後のソフトウェア製品またはサービス提供システム上のソフトウェア製品の修正、
  • サービス貸与期間中の譲渡後の支援、
  • 譲渡後またはサービス貸与期間中の製品の保証、
  • ソフトウェア製品の保守(顧客のシステムまたはサービス提供システム上)。

条文は以下の通りです。

6. Software product installation, transfer, instruction, and maintenance, which include one or multiple following operations: transferring (entire products or rights to use products in form of hiring); instructing installation (in case of total product transfer); installing software products (on customers’ systems in case of total product transfer or on service providing systems in case of lending software products); training and instructing (persons using or hiring services); examining software products after transferring or software products on service providing systems; correcting software products after transferring or software products on service providing systems; providing post-transfer assistance during service rental period; guaranteeing products post-transfer or during service rental period; maintaining software products (on customers’ systems or service providing systems).

7.配布・販売・リース

マーケティング関連文言が除かれ、レンタル文言が追加されたようです。

製造されたソフトウェア製品の販売、貸与、配布、出版を含むソフトウェア製品の出版・配布。

条文は以下の通りです。

7. Publishing and distributing software products, which include one or multiple following operations: selling, lending, distributing, and publishing manufactured software products..

ソフトウェア開発において最低限含むべき工程

ベトナムの法人税の優遇税制の適用を受けるためには、上記のプロセスのうち 1 もしくは 2 の工程を必ず含むことが必要です。つまり、以下の工程です。

  1. 要件定義:機能、特徴、コンテキスト等ソフトウェアの要件を決めることが該当する
  2. 分析・設計:要件の仕様、アルゴリズムの設定等が該当する

ちなみに、優遇税制の対象になる「ソフトウェア開発」とは何か?という点ですが、通達16/2014/TT-BTTTTの付属明細にリストアップされていますのでそちらを参照するといいと思います。

ソフトウェアの優遇税制の適用にあたっての書面や資料の種類が明記された!

ここが、実務上、最も大事なポイントだと思います。

優遇税制を適用するための事前に準備する書類が明確になった。

優遇税制を適用するための文書について明確化されたのです。以前は、曖昧であったため、事後的に優遇税制の適用が否認されるケースが多かったのです。これでは、公平性という観点からも問題ありますし、適用する側としてはリスクが大きすぎます。

「ずっと優遇税制の適用が可能だと思っていたのに実はダメだった。法人税を遡って払ってください」

って指摘されても資金繰りによっては、キャッシュショートしてしまう可能性だってあります。

詳細は通達やベトナム人の専門家に確認することをおすすめします。以下では内容(4項)を記載します。上記で述べたプロセスに関連させて規定されています。

a)要件決定段階での各操作を証明する文書【要件定義】

  • 開発方法に関するアイデアの説明。
  • 製品の特性(要件)および製品の使用状況の説明。
  • 製品の提案と調査結果、明確化結果、および要件開発結果の説明。操作に関する詳細な説明と分析。
  • 製品の完全な要件の説明。手続き調整に関するコンサルタントの内容の説明。要件の統合、要件の承認、管理能力の説明、および製品の要件への準拠を検証するための要因に関する記録。または同等のドキュメント。

b)分析および設計段階での各操作を証明する文書【分析・設計】

b) 解析・設計段階での各作業を証明する書類。

分析・設計段階における各作業を証明する文書:要件の記述、開発方程式の確立及びソリューションを最適に活用するために必要な技術、ソフトウェアの正当性及び審査能力の分析、ソフトウェア要件が運用環境に与える影響の分析、優先順位付け、承認及び必要に応じて更新する要件のリスト、データモデリング、機能モデリング及び情報チャネルモデリングの記述、ソフトウェアソリューションの記述、ソリューション設計及びソフトウェアシステム設計、データ設計、構造設計、ソフトウェアの構成単位及びモジュールの設計、ソフトウェアの情報安全性及びセキュリティの設計、顧客インタフェースの設計、又はこれに相当する文書。

c)プログラミングおよびコーディング段階での各操作を証明する文書【プログラミング・コーディング】

c) プログラミング及びコーディングの段階での各操作を証明する書類。cプログラミング及びコーディング段階における各作業を証明する文書:企業がソフトウェアコードを書いたことを証明するための一次ソースコードライン、連結ソフトウェアの記述、又はこれに相当する文書。

d)ソフトウェアの検査および実験段階での各操作を証明する文書【検査・テスト】

d) ソフトウェアの検討・実験段階での各作業を証明する文書。d) ソフトウェアの審査・実験段階における各動作を証明する文書:ソフトウェアのユニットやモジュールの審査・実験のスクリプト、ソフトウェアの実験結果、ソフトウェアシステムの実験結果、ソフトウェアの機能実験結果、ソフトウェアの品質評価結果、エラーの可能性の評価、ソフトウェアの情報安全・セキュリティに関する記述、顧客の要求に対するソフトウェアの満足度の検証、ソフトウェアの検査記録、またはこれに相当する文書 dd) ソフトウェアの審査・実験段階における各動作を証明する文書:ソフトウェアの審査・実験段階における各動作を証明する文書

dd)ソフトウェア製品の完成およびパッケージング段階での各操作を証明する文書【完了・梱包】

dd) ソフトウェア製品の完成・梱包段階における各動作を証明する書類

ソフトウェア製品の完成・梱包段階における各作業を証明する書類:ソフトウェア製品の全体的な導入、インストール指示書(製品全体を移 転する場合)、製品又はサービスの使用指示書(サービスを使用する者又は雇う者のためのもの)、型式登録証明書の写し(ある場合)、知的財産権登録の写し(ある場合)、又はこれらに準ずる書類 e) ソフトウェア製品の完成・梱包段階における各作業を証明する書類

e)ソフトウェア製品のインストール、転送、指示、および保守の各段階での各操作を証明する文書【インストール・移送・使用案内・メンテナンス】

e) ソフトウェア製品のインストール、譲渡、指示、保守の各段階での各操作を証明する書類。

・ソフトウェア製品のインストール、譲渡、指導、保守の段階における各作業を証明する書類:譲渡契約書または記録(製品全体またはレンタルの場合の製品使用権)、インストール説明書(製品全体を譲渡する場合)、ソフトウェア製品のインストールに関する記述(製品全体を譲渡する場合は顧客のシステム上、ソフトウェア製品を貸与する場合はサービスを提供するシステム上)、トレーニングおよび指導内容(サービスを利用する者、レンタルする者)。ソフトウェア製品譲渡後のソフトウェア製品検査またはサービス提供システム上のソフトウェア製品の説明、ソフトウェア製品譲渡後のソフトウェア製品修正またはサービス提供システム上のソフトウェア製品の説明、サービスレンタル期間中の譲渡後の支援の説明、譲渡後またはサービスレンタル期間中のソフトウェア製品保証の説明、ソフトウェア製品のメンテナンスの説明(顧客のシステムまたはサービス提供システム上)。

詳しく記載してあるとはいえ、抽象的ではありますね。

情報通信省の情報技術室への報告義務

ソフトウェアの情報および実施工程、適用税率について、情報通信省の情報技術局に毎年報告

以前の通達では、年1回3月15日までと定められていました。新通達では、ソフトウェア開発のプロセスや適用税率についての定期的な報告義務となりました。以下を参照してください。

>>IT企業が情報通信省に提出する必要のあるレポート【ベトナムコンプライアンス】

本日のまとめ 

本日は、ベトナムのソフトウェアの優遇税制の適用について解説させて頂きました。

  • ソフトウェアの開発プロセスの明確化
  • 優遇税制適用のための準備すべき書類が明確化
  • 情報通信省への報告義務

条件を満たすソフトウェアの会社は、法人税法上、以下の税制優遇を受けることができます。

  1. 優遇税率10%が15年間にわたり適用。
  2. 課税所得の発生から4年間は免税で、続いて9年間50%減税が適用(4免9減と呼ばれています)。(※ただ、設立から3年経っても課税所得が発生しない場合、課税所得の有無に かかわらず第4事業年度から強制的に4免9減の優遇制度の適用が開始)

影響がとても大きいので、是非検討してみてください!

ただし、以下に留意です。

ソフトウェア制作は、「無形の、多段階の、高度に専門的な経済活動」です。そのため、企業の活動がインセンティブを受ける権利があるかどうかの判断は、慎重に行うべきです。
なぜならば、各役所の意見に依存する可能性があるからです。 企業活動情報との整合性とそれに基づきます。以下のことを検討してもいいのかなと考えます。


1、情報技術を管理する専門機関(省庁情報通信部)に質問/確認書を送る。
2、ビジネスの税務当局に特定の問い合わせを送信して税制優遇措置を決定するため質問/確認書を送る。
3、上記に基づき書類および関連情報の準備

あなたがの会社がベトナムの優遇税制について、きちんと理解して、ベストな判断を下すことを祈っていますね。