こんにちは!マナラボの菅野です。
「5月30日にベトナムに着任したけど、どうせ数日しかいないし、その月は非居住者だから関係ないよね?」──
そんな風に思っていませんか?
実はそれ、ベトナム税務では完全に“アウト”な誤解なんです。
ベトナムでは、たとえ月の末に入国しても「その月まるごと」課税対象になります。
つまり、税務上はその月から「居住者」として扱われ、全世界所得が申告対象になる可能性があるんです。
この記事では、このちょっと驚きのルールについて、条文ベース+税務局の公文書付きでわかりやすく解説していきます!
この記事のもくじ
結論:月途中入国でも、その月全体が課税対象です!
はい、いきなり結論ですが、これは明確にルール化されています。
📌 根拠:通達119/2014/TT-BTC 第2条(公式法令)
“Nghĩa vụ thuế thu nhập cá nhân được tính từ tháng đến Việt Nam … (được tính đủ theo tháng)”
👉 日本語訳:「個人所得税の納税義務は、ベトナムに入国した月から課税され、(月単位で満額計算する)」
つまり、5月30日に入国した場合でも、「5月分の給与がまるっと課税対象になる」ってことなんです。
ベトナム語の「được tính đủ theo tháng」は、日本語に訳すと:
「月単位で満額(まるごと)計算される」
または
「その月全体を1か月として計算する」
という意味になります。なのでまるっと対象でしょうと。
実際のよくある誤解
よくある質問 | 実際の取扱い |
---|---|
5月30日入国なら、2日分だけ申告?(という考えもできるとは思うんですがね) | ❌いいえ、5月全体を申告 |
日本側からの給与は含まれない? | ❌居住者なら「全世界所得」課税 |
労働許可証が出てないから、まだ課税じゃない? | ❌入国して働いていれば課税開始 |
しっかりした法的裏付けがあります!ベトナムのオフィシャルレター
実は、このルールはちゃんと税務局の公文書でも明言されてるんです。
Công văn 7951/CT-TTHT(ホーチミン市税務局・2017年8月18日)
“Nghĩa vụ thuế… được tính từ tháng đến Việt Nam đến tháng kết thúc HĐLĐ và rời Việt Nam (được tính đủ theo tháng)”
👉 訳:入国した月から出国月までを、月単位で課税期間とする(途中入国でも満月で数える)
これ、まさに5月30日入国のようなケースを想定していますよね!
具体例で見てみよう!
ケース:Aさんが2025年5月30日にベトナムに初めて赴任(出向)した場合
- ベトナム給与:5月31日に1日分支給 → ✅ 課税対象
- 日本本社からの給与:5月1〜31日 → ✅ 全額ベトナムで申告対象!
「えっ、日本で払った給料までベトナムで申告!?」
そうなんです。ベトナムの居住者に該当すると、全世界所得が課税対象になるのです。これは当たり前なんですけどね。違和感は2日しかいないのに1ヶ月分!というところでしょうね。
📌 根拠:個人所得税法第3条および通達111/2013/TT-BTC 第1条
👉「居住者個人の課税対象所得は、国内外すべての所得(支払元にかかわらず)」
日本給与はどう処理するの?
「でも日本でも源泉徴収されたよ?」という声もありますよね。
→ 安心してください。ベトナムと日本は租税条約を締結しているので、外国税額控除制度が使えます。
つまり、日本で払った税金をベトナムで控除申請すれば、二重課税にはなりません。
なぜ「月単位」なのか?
理由は大きく2つあります:
- 実務簡便性(企業も個人も月単位で管理しているため)
- 租税条約での調整負担を軽くする(入出国のたびに日割りだと煩雑)
ベトナムの制度は、**「入国した月から、月単位でガチッと計算」**という形をとることで、現場でもわかりやすくなっているんです。
まとめ:月末入国でも、油断しないで!
- 「月の途中で入国したから…」と思っていても、
- ベトナムの税務ルールでは、その月全体が課税対象になります。
- 日本給与も申告対象になるので、グローバル給与情報の整理が必須!
他にも関連するオフィシャルレターがありますよ。
文書番号 | 発行元 | 発行日 | 「月途中でも満月扱い」趣旨の記載 | 信頼度(アクセス可能性) |
---|---|---|---|---|
7951/CT‑TTHT | ホーチミン市税務局 | 2017/08/18 | 初入国月から出国月まで月単位で課税期間計算(được tính đủ theo tháng) | 高 |
6043/CT‑TTHT | ハノイ市税務局 | 2020/02/18 | 同上 | 高 |
3421/TCT‑DNNCN | 税務総局 | 2020/08/19 | 家族控除も含め月単位満額処理と記載 | 高 |
9188/CTHN‑HKDCN | ハノイ市税務局 | 2022年 | 控除計算にも月単位対象との趣旨 | 中〜高 |
参考資料・法的根拠リンク集
資料名 | リンク |
---|---|
通達119/2014/TT-BTC | 原文はこちら(thuvienphapluat.vn) |
Công văn 7951/CT-TTHT(2017年) | ホーチミン税務局公式文書 |
個人所得税法第3条(2007年) | 英訳版はこちら |
「月途中入国でもその月全体を課税対象とする」という扱いは、通達119/2014/TT‑BTC 第2条の明文に立脚した制度であり、各地方税務局・税務総局の公文でも明確に支持されています。
信頼性の高い公式文書をもとに記事を組み立てたい場合は、上記4文書を中心に説明すれば、根拠十分+示唆的な内容になると確信しています。
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では、また次回!
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