こんにちはマナボックスの菅野です。
今日は『グローバル・ミニマム課税の具体的な意味とベトナムへの投資の影響』というテーマでお伝えします。
もしあなたが海外に進出しており、その海外で低い法人税率や優遇税制を適用しているのなら本日のテーマは必ず見ておく必要があります。わかりやすく解説するので是非、最後までお読みください。
この記事のもくじ
グローバル・ミニマム課税とは?日本での適用は2024年4月から
まずこちらについての定義を解説します。
「グローバル・ミニマム課税」は、多国籍企業が税負担を軽減するために税金の低い国に利益を移すことを防ぐために提案された税制の仕組みです。この目的のため、各国は最低限の法人税率を設定し、企業の税逃れを抑制します。この税制は、国際課税ルールの改革に関する議論の中で、主にOECD(経済協力開発機構)やG20(主要20カ国・地域)で検討されています。
このルールの導入により、多国に展開している企業グループが、ある国で実際に負担している税率(実効税率)が最低税率である「15%」を下回る場合、最終親会社等(日本など)に上乗せ課税されることになります。ただし、以下のような基本的な条件もありますのですべての会社が対象となるわけではありません。
グローバル・ミニマム課税は、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業を対象
つまり、約1,050億円規模の売上がある企業でないとそもそも土俵にのっかりません。
具体例を示せば、以下のような課税となるでしょう。
- 日本に親会社がある
- 法人税率が5%の国の外国(ベトナム)に子会社がある場合(あくまで理解のための税率)
- 10%(15%から5%を引いた)が追加課税
もう少しわかりやすく解説しましょう。
グローバル・ミニマム課税は、ちょっとしたお金のルールの話です。お母さんやお父さんが仕事でお金をもらうとき、国は「税金」というお金をもらうことがあります。これは、みんなが使う道路や学校などを作るために使われます。
でも、世界にはたくさんの国があって、その国ごとに税金をもらう割合(税率)が違いますよね。だから、大きな会社はお金をたくさん払う国よりも、お金を少ししか払わなくてもいい国に行こうとします。それで、お金が逃げちゃうんです。タックスヘイブンという言葉を聞いたことがあるかもしれません。
ここで、「グローバル・ミニマム課税」が登場します。これは、世界中の国が協力して、税金をもらう割合を決めるルールです。例えば、お菓子を分けるときに、最低でも3つずつはもらうようにする、みたいな感じです。
これで、お金が逃げることを防げるんです。みんなが公平にお金をもらえるようになります。
鬼滅の刃で喩えると?
続いてアニメで喩えてみます。
「鬼滅の刃」の世界では、鬼を倒すために、炭治郎たち鬼殺隊のメンバーが力を合わせて戦っていますよね。炭治郎は、たくさんの仲間と共に鬼と戦い、人々を守るために奮闘しています。
「グローバル・ミニマム課税」も、まるで炭治郎たちが鬼と戦うように、世界中の国々が力を合わせて、企業の税逃れという「鬼」に立ち向かっています。企業の税逃れは、人々の暮らしや国の経済に悪影響を与えることがあるので、国々は力を合わせてこの問題に立ち向かわなければなりません。
そして、「グローバル・ミニマム課税」は、まるで炭治郎たちが持つ刀のようなものです。この刀を使って、国々は企業の税逃れという鬼を倒そうとしているんです。この刀(「グローバル・ミニマム課税」)の力で、各国は最低限の税金を得ることができ、人々の暮らしを守ることができると考えています。
グローバル・ミニマム・タックスは、炭治郎たちのように力を合わせ、世界中の国々が共に戦って、公平で平和な世界を目指す大切な取り組みなんですね。
このように、グローバル・ミニマム課税により、実効税率が15%を下回る場合は上乗せ課税が課されるため、多国に展開する企業グループは実効税率が15%を下回る国に進出するインセンティブが失われてしまいます。
なお、2021年に、G7(先進7カ国)はグローバル・ミニマム課税について合意し、少なくとも15%の最低法人税率を支持することを発表しました。その後、2021年10月には、OECDとG20の加盟国もこの合意に署名しました。この取り組みは、国際的な税務コンプライアンスを強化し、税逃れを防止するための手段として期待されています。ただし、各国が具体的な実施方法やタイムラインについては、今後詳細について合意しなければなりません。
日本の場合は、2022年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」により、グローバル・ミニマム課税の所得合算ルールが、2024年4月1日以後に開始する会計年度から適用されるようです。
ベトナムにおけるグローバル・ミニマム課税による外資企業への影響とは?
ハノイ(VNA)- 2023年4月18日、ファイナンス大臣のホ・ドゥク・フォック氏は、ベトナムは「グローバル・ミニマム課税」の影響を完全かつ包括的に評価する必要があると述べました。
ハノイで開催された「グローバル・ミニマム課税:国際的な経験、潜在的な影響、ベトナムへの意味合い」のカンファレンスで、フォック氏は、親会社がグローバル最低税の対象となるベトナムの外国投資企業1,015社のうち、来年2024年から適用されるグローバル・ミニマム課税によって影響を受ける可能性がある70社以上が存在すると述べました。
560億円以上の影響か? ベトナムに投資する意味がなくなってしまう?
親会社の本拠地となる国がグローバル最低税を適用し、その税金を徴収する場合、2024年に約12兆VND(510.5百万米ドル)の追加税金が徴収されると予想されています。
グローバル・ミニマム課税の導入は、ベトナムの税制優遇策が外国人投資家の誘致にあまり効果を発揮できず、ベトナムの投資環境の競争力を維持するための重要な課題となる可能性があると、大臣は述べました。
つまり、ベトナムに優遇税制が存在するから進出したとしても、それが実質的に意味がなくなることから、「ベトナムに進出するの??」という疑問が生まれてしまうのです。
日本や韓国もこのグローバル・ミニマム課税を適用
これまでに、EU諸国、スイス、英国、韓国、日本、シンガポール、インドネシア、香港(中国)、オーストラリアなどの国々が、2024年から最低税率15%を適用することを確認されています。
ご存知の通り、これらの国の中で、韓国、シンガポール、日本はベトナムに大規模な投資を行っており、グローバル最低税の対象となる多くの企業が存在しています。
ベトナムで優遇税制を適用している日系企業の影響
総税務局の副局長であるダン・ンゴック・ミン氏によると、ベトナムでは、製造・加工業界で1億米ドル以上の登録投資額を持つ約335のプロジェクトが、特にサムスン、インテル、LG、ボッシュ、シャープ、パナソニック、フォックスコン、ペガトロンなどのハイテク分野の企業を中心に、法人所得税の優遇措置を受けており、税率が15%未満です。
これらのプロジェクトの登録投資額の合計は、ベトナムにおける外国直接投資(FDI)総額の約30%にあたる1313億米ドルです。
優遇税制が適用するならベトナムに投資しないかも?
したがって、ベトナムがタイムリーな対応をせずにこの税制を適用すると、外国からの投資を引き付ける競争力が失われることになり、外国人投資家の投資拡大計画にも影響が出る可能性があります。
そうした場合、雇用にも影響がでるのでベトナム全体に影響を及ぼすことでしょう。
ミン氏は、ベトナムがグローバル最低税を適用しない場合、法人所得税からの国家予算収入には影響がないと述べました。
しかし、ベトナムが国内標準の最低税を適用する場合、ベトナムは、ベトナムで低い税率を享受しているFDI企業に対して追加の税金を課す権利があり、それによって国家予算収入が増加することになります。
ベトナムが追加の法人所得税を徴収しない場合、既存の企業向けの税制優遇措置の全額が親会社の本拠地である国々に徴収されることになります。
本日のまとめ
今日は「グローバル最低税」というテーマで解説しました。
- グローバル・ミニマム課税によれば、実効税率が15%を下回る国がある場合には、その不足分について上乗せされる。
- 日本は2024年4月1日より適用
- ベトナムに進出しようという外資系企業が減少するかもしれない
今後の動きに引き続き着目していきましょう。