こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。
ベトナムの国会で2019年6月13日、改正税務管理法が可決されたようです。
適用予定日は、2020年7月です。ただし、一部の法律については(E-Invoiceや電子書類)につては、2022年7月1日から適用となっています。
本日は、2019年6月13日に発行されたベトナム改正税務管理法についての概要のみを説させて頂きますね。
この記事のもくじ
ベトナム改正税務管理法の概要 38/2019/QH14
大きくグルーピングすると、以下のように整理できます。
- ベトナム税務手続きの大幅な変更
- 税務上の義務が残っている個人への税務当局への権限の強化
- 電子商取引(EC)事業への税金の徴収を徹底化(商品を販売する個人および外国組織に対する徴税が強化)
- E-InvoiceやE-transactionに関する事項
- 租税回避や移転価格税税制への対応
このベトナム改正税務管理法によれば、変更点はたくさんあります。この原文を見ると80ページ近くありますからね。ものすごいボリュームになると思います。
本日は、特に留意すべき点について記載していきたいと思います。
- ベトナムに現地法人がある。
- ベトナムの税制が怖い。
- 2019年6月改正税務改正による影響を知りたい。
それでは、それぞれ見て行きましょう。
①ベトナム税務手続きの大幅な変更
まずは、①税務手続きの変更についてです。
①-1:税務申告書の申告期限が変更された。
いままでは、月末日から30日後まで、とか、期末日から90日後までの提出期限でした。
このケースは、実務的には問題がありました。
例えば、2月であれば、28日までの年もあれば29日の年の時もあります。また、月によっては、30日までの日の月と31日までの月がありましたよね。
こういった場合に実務上、混乱をきたすケースがあったようです。実務上は、いつなの?ということです。例えば、31日まで?1日まで?などです。
そのため、ベトナム改正税務管理法では、「○○月後の最終日」という言い方に変更されました。例えば、翌月の最終日までとか3ヶ月後の最終日までとかです。
①-2:個人所得税の確定申告の期限が、3月末から4月30日になる。
今までは、暦年(1月から12月)を対象とした個人所得税の確定申告の期限は、3月末まででした。しかし、それが4月30日までに延長されました。(個人での申告分)
おそらく、3月30日に申告する人があふれて手続きを完了するのが困難だったのかもしれません。
これを延長することにより、3月に確定申告する人、4月に確定申告する人とある程度平準化されることが期待できるわけなので税務所側の負担も減ることが期待できます。
とはいえ、人間の心理……。本来は怠け者…。先延ばしする癖…。ベトナムの方は特にスケジュール管理は強くありません……。
3月じゃなくて4月まで先延ばしにして、また混乱しそうな気がします。あると思います!
①-3:通常の修正申告と税務申告後の修正申告
現状では、修正申告の期限はありません。いつでもできるようです。
また、税務調査に入ったあと、追徴などが科される時があります。追徴(追加で税金を払う)のみに修正申告が認められています。
ベトナム改正税務管理法では、修正申告の期限は10年までと定められました。(ただし、税務調査実施までという縛りはあるようです。)
また、税務調査後に修正申告する場合については、追徴のみならず還付(税金が減る方向)する方向へ修正も可能となりました。
納税について公平であることを求めた結果だと思います。
①-4:法人税率が、課税所得だけでなく、売上にも?
現状は、原則として、課税所得(税務上の利益)に20%を乗じた金額が法人税率です。
しかし、ベトナム改正税務管理法では、ある一定の場合、課税所得だけではんく売上に税率を乗じた金額を法人税としてみなすことができるようです。
これは、かなりベトナム側に有利な話です。
②税務上の義務が残っている場合の税務当局への権限の強化
②-1 外国人(駐在員)が、ベトナムから帰任する際、税務の義務の強化
現状は、帰任前に原則として確定申告するという決まりはあるものの実効性を確保する手段がありませんでした。税務調査で事後的に気が付く可能性があるくらいです。
ちょっと原文を見てましょう。
Article 66. Completion of tax payment obligation in case of exit
1. Taxpayers falling into cases where they are subject to enforcement of administrative decisions on tax administration and Vietnamese leaving Vietnam for overseas residence, Vietnamese residing overseas or foreigners before exporting scenes from Vietnam must fulfill tax obligations; In case of not fulfilling the tax payment obligation, exit shall be suspended according to the provisions of law on exit and entry.
2. Tax administration agencies shall notify immigration department of individuals and taxpayers specified in Clause 1 of this Article.
1は、出国前に、個人所得税の納税を済ませることと記載されています。これは、当然といえば当然ですよね。そして、納税していなければ、出国できないと記載されています。
加えて2です。ここが、ポイントになってくると思っています。
税務当局は、もし、その個人が個人所得税を支払っていなければ、入館管理局へ通知しなければならないと言っています。
「その人、納税義務終わってないから、出国させちゃだめ。」
ということですね。おそらく、日本人以外(かと思いますが)納税完了せず帰国した人がいっぱいいたのかもしれません。
イミグレーション(入国管理局)と税務当局が連携が強まると、、、。(ここからは私の個人的な意見も入っています。)
入国管理局は、ビザ(就労ビザなど)の情報を持っていますよね。実務上、ビザを持っているが、個人所得税払ってないケースって結構あるかもしれません。例えば、短期的な出張など。
今の法律の文言では、税務当局⇒入国管理局という連絡になっています。しかし、入国管理局⇒税務当局という流れになるとちょっと大変かもしれません。
ただ、ベトナムとしても外国人の出張者が、お金をベトナムに落として、経済に貢献している点を忘れてはいけないのかなとも感じます。
税金が怖すぎて、短期的にもベトナムに来れないという状況は、ベトナムにもいい影響を与えないと思いますので、この辺は、そこまで厳しくならないのかなとも思います。
②-2 ベトナム現地法人を清算した場合の出資者への責任を強化
事業がうまくいかず、撤退……。ということがどうしてもあると思います。
実務上、清算手続き(納税の完了等)をしないで、要は、バックレるというケースがあるとも聞きます。
このような事態を避けるため、株主(出資者)の責任を強化したのかと思われます。
③電子商取引(EC)事業への税金の徴収を徹底化
これまで、外国企業の電子商取引(EC)への課税が十分にできてなかったという問題がありました。
また、個人によるSNSを利用した場合の商品販売先は国内外にわたります。したがって、十分に課税するのが困難でした。
そこで、この改正税務管理法により、商工省は財務省と協力し、ECへの課税強化を図るようです。
④E-InvoiceやE-transactionに関する事項
ベトナムでは、最近電子インボイスが話題となっていますよね。
この一番の目的は、税金を漏れなく徴収することです。
したがって、税務当局のシステムのインフラの整備もされている必要があります。これが予定よりも遅れている理由もあり、強制適用の日付が延長されました。
2020年11月1日から2022年7月1日となりました。
追記⇒Circular 68/2019 / TT-BTC 電子インボイスについてベトナム人公認会計士に聞いてみました!
⑤租税回避や移転価格税税制への対応
移転価格税制…。ベトナムで苦い経験された方もいるのではないでしょうか?
参考記事:中学生でもわかる移転価格制度の仕組み
さらに厳しくなるようです。
具体的には、1納税者および2税務当局職員、税務当局との間での移転価格で有利(脱税)にするための共謀、結託、蔵匿の禁止が明文化されたようです。
過去になにか、このようなよくない事例があったのでしょう。
また、改正税務管理法では、計画投資省が、移転価格強化について指示、指導することも明記されているようです。
本日は、ベトナム改正税務管理法について、解説させて頂きました。重要なところについては留意されるといいと思います。
あなたが、ベトナム税務を正しく理解することにより、不測な損害を受けないことを祈っていますね。