こんにちは、マナボックス ベトナムの菅野です。
本日は、改正労働法(ベトナム 2019 年労働法)の労働契約の種類と労働契約が必要ない場合の働き方、これに加えて個人所得税の関係について解説していきます。
ベトナム労務専門家や個人所得税の専門家にも伺いました。
本日のお話を聞いて頂ければ、どのような方法で働いてもらうか?の意思決定にお役にたてます。
この記事のもくじ
労働契約を結ぶ場合
労働契約の考え方
改正後労働法 | 旧労働法 |
第 13 条 労働契約 1.労働契約とは,報酬,賃金を得られる業務,労働条件,労使関係における 労働者と使用者の権利および義務に関する労働者と使用者の合意である。 両当事者が異なる名称による合意をしたが,その内容が報酬,賃金を得られる業務及び一方当事者の管理,運営,監察に関する表現であれば,それは 労働契約と看做される。 | 第15条 労働契約 労働契約とは、賃金が支給される仕事、労働条件、労使関係における当事者各々の権利と義務に関する被雇用者と雇用者との間の合意である。 |
改正法では、労働契約の定義が拡大されたと理解していいでしょう。そのため実態が、労働契約である場合、労働契約と看做される可能性があります。
改正労働法では,労働契約のパターンで以下の4つがある
労働契約の種類は、以下の4つに整理できます。
- 有期限労働契約
- 無期限労働契約
- パートタイム(①に含まれる概念だと考えられる)
- 試用契約(試用契約と労働契約は別個のものとすることが可能)
旧法と比較してみましょう。
改正後労働法 | 旧労働法 |
第 20 条 労働契約の種類 1.労働契約は,以下の各種類の一つに従って締結されなくてはならない a) 両当事者が契約の期限,契約の効力終了時点を確定しない,無期限労働契約 ;b) 契約の効力発生時点から 36 か月を超えない期間で両当事者が契約の期 限,契約の効力終了時点を確定する,有期限労働契約 。 c)削除された | 第22条 労働契約の種類 1. 労働契約は次のいずれかの形式で締結されなければならない。
|
【いわゆる、パートタイム】 労働法32条(短時間労働) 1.短時間労働者とは,労働に関する法令,集団労働協約,又は就業規則に規定された 1 日あたり,1 週あたり又は 1 月あたりの通常の労働時間と比較してより短い労働時間の労働者である。 2.労働者は労働契約締結の時に使用者と短時間労働を合意する。 3.短時間労働者は,賃金の支払いを受け;通常の労働者と平等の権利,義務 であり;機会の平等を受け,取扱の差別を受けず,労働安全衛生を保証される。 | – |
【試用期間と労働契約は一体という考え方もあり】 第 27 条 試用期間の終結 1.試用期間終結の際,使用者は試用の結果を労働者に通知しなければならない。 試用の結果が使用者の要求に達していた場合で,締結済みの労働契約に試用の合意がある場合,労働者はその労働契約を引き続き履行し,試用契約を締結していた場合は労働契約を締結しなければならない。 試用の結果が使用者の要求に達していない場合は,締結済みの労働契約又 は試用契約を終了する。 2.試用期間中において,いずれの当事者も試用契約又は締結済みの労働契約を事前の通告なく,かつ損害賠償の必要なく解除する権利を有する。 | 第29条 試用期間の終了 1. 試用期間での業務が満足なものであった場合、雇用者は被雇用者と労働契約を締結しなければならない。 |
このように比較するとわかりやすいかと思います。
労働契約があれば、基本的に社会保険に加入
会社が、労働契約を結んだ場合、原則として、社会保険に加入と理解しておくといいです。
パートタイム(短時間労働者)の社会保険についても、正規社員と同等の取り扱いをする必要があります。すなわち、パートタイムの労働者であってもその社会保険料を負担しなければならないことになります(決定595/QD-BHXH第42条4項を根拠)。ただし、当該労働者の月の勤務日数が14営業日を越えない場合を除きます。
ベトナム労働契約が必要ないと想定している場合
ベトナムのルールを確認しよう!
この労働契約が必要ない場合については、No. 111/2013/TT-BTCという通達から読み取れます。
源泉徴収のところで、「労働契約を必要としない場合」という記載があります。
この通達のArticle 25. Tax withholding and certificate of tax withheld at source(源泉徴収するの規定)のi)に注目しましょう。
以下です。
i) その他の場合の源泉徴収税
労働契約を締結していない居住者(本Circular の第2条c項およびd項で案内されている)、または、労働契約を締結している期間が3ヶ月未満の居住者に 総額200万ドンの収入を支払う組織または個人は、その収入に対して10%の税金を源泉徴収した上で、その人に支払わなければなりません。
つまり、労働契約を結ばずに、個人に支払いすることが想定されています。どうやら、第2条c項およびd項を読み解く必要がありそうです。
なお以下は原文です。引用しておきますね。
Article 25. Tax withholding and certificate of tax withheld at source
i) Withholding tax in other cases
The organization or person that pays a total income from 2 million VND to a resident that does not sign a labor contract (as guided in Point c and Point d Clause 2 Article 2 of this Circular) or that signs a labor contract for less than 03 months shall withhold 10% tax on the income before it is paid to the person.
どんなケースが労働契約の必要なしと想定しているのか?
以下のような場合です。以下の2つにグルーピングするといいと思います。
- 外部へ業務委託系(サービス提供)
- 会社内部だが、給与以外の給付があった場合
業務委託系(サービス提供)
実務で発生可能性が低くない事例としては、以下があります。
- 代理店手数料、
- 仲介手数料(なにか紹介してもらった)
- プロジェクトや計画への参加に対する支払い(プロジェクトをお願いした)
- 教育サービスに対する支払い、
- 芸術公演やスポーツへの参加に対する支払い、
- 広告に対する支払い、
- その他のサービスに対する支払い、およびその他の報酬
給与以外の給付があった場合
実際に発生するのは以下かなと思います。ただ、あんまり、私もイメージできません。
- 医療、娯楽、スポーツ、レクリエーションなどの個人向けサービスに対する会費およびその他の支出など。(労働契約に含まれてない場合)
以下は、実際の規定の日本語訳です。詳しく確認したい時には、よく確認するといいと思います。
c) 代理店手数料、仲介手数料、科学技術研究への参加に対する支払い、プロジェクトや計画への参加に対する支払い、使用料に関する法律の規定による使用料、教育に対する支払い、芸術公演やスポーツへの参加に対する支払い、広告に対する支払い、その他のサービスに対する支払い、およびその他の報酬。
d) 企業団体、取締役会、管理委員会、プロジェクト管理委員会、経営協議会、専門家団体、その他の組織への参加に対する支払い
dd) 雇用主から納税者に支払われた賃金とは別に、現金または現金以外の形でのその他の給付。
dd.1) 住居、電気、水の供給、および補助的サービスに対する支払い(ある場合)。
その人が職場に滞在している場合、課税対象となる所得は、その人が使用している面積の職場の総面積に対する割合に応じて、住宅の賃貸料または減価償却費、電気、水道、その他のサービスへの支払いに応じて決まります。
雇用主が被雇用者に代わって支払った家賃は、実際の金額に応じて課税所得に含まれ、その金額は職場で得られる課税所得総額(家賃を除く)の15%を超えてはならない。
dd.2) 被雇用者に代わって雇用主が支払った、または行った生命保険料、その他の任意保険料、任意年金基金への拠出金。
dd.3) 医療、娯楽、スポーツ、レクリエーションなどの個人向けサービスに対する会費およびその他の支出。具体的には
dd.3.1) 会費(ゴルフ場、テニス場、文化・芸術・スポーツクラブの会員証など) – カードがユーザーまたはユーザーのグループを特定している場合。カードが特定のユーザーなしに共有されている場合、その料金は課税所得に含まれません。
dd.3.2) 医療、娯楽、スポーツ、レクリエーションなどの個人向けサービスへの支出。- 受領者の名前が明記されている場合。受取人が特定の個人ではなく、従業員の集合体である場合は、課税所得に含まれません。
dd.4) 文房具、出張、電話、衣装などのフラットな支出で、国が定める限度額を超えるもの。以下のケースでは、定額支出は課税所得に含まれません。
dd.4.1) 公共サービス機関、共産党機関、協会の役職員の場合:定額支出は、財務省が公布したガイド文書を適用する。
dd.4.2) 企業や駐在員事務所で働く従業員の場合:定額支出は、企業所得税が発生する所得および企業所得税に関する法律の指針文書に準拠するものとする。
dd.4.3. dd.4.3. 国際機関および外国機関の駐在員事務所に勤務する従業員:定額の支出は、当該国際機関および外国機関の駐在員事務所の規定に準拠するものとする。
dd.5) 従業員をシャトルするための支出は、従業員が得た課税所得には含まれない。個人的にシャトルされる場合は、シャトルされた人が得た課税所得に含まれるものとする。
dd.6) 従業員の職業に合った、または雇用者の計画に合致した再教育コースへの支払いは、従業員が得た所得に含まれないものとする。
dd.7) その他の手当。
使用者から従業員に支払われるその他のもの、例えば、休暇期間や祝祭日中の支払い、特定の個人やグループに対するカウンセリングや税務申告サービスへの支払い、運転手や料理人などの家事使用人への支払い、契約に基づいて働く家事使用人への支払い、など。
個人所得税との関係
では、個人所得税はどうなるでしょうか?ベトナム公認会計士のアインさんにも聞いてみました。
ベトナムの個人所得税の税率は、簡単に説明すると、
1)累進課税(所得が上がれば上がるほど税率が高くなる)
と
2)それ以外(固定で10%など)
があります。
労働契約書がある場合は基本、累進課税。そうでない場合は、10%の源泉徴収
このようにまずは整理するとわかりやすいです。
- 労働契約書がある場合→原則として、累進課税
- そうでない場合→10%の源泉徴収
ただ、労働契約書があっても、労働契約期間が3ヶ月未満である場合は、10%の源泉徴収で申告します。つまり、あなたの会社が、10%を源泉(差し引いて)して、申告・納税します。
なお、月あたり2,000,000ドン未満の場合は、源泉徴収は必要ありません。
>>お忘れでありませんか?業務委託の場合、ベトナムの個人所得税の源泉徴収は、基本的に10%
ただ、最終的には、「確定申告」することにより、正確な個人所得税を納税することには変わりません。
本日のまとめ
本日は、ベトナム改正労働法(2019)による労働契約書が必要な場合とその他通達が想定している労働契約が必要ない場合及び個人所得税についてまとめました。
労働契約が必要な場合 | 労働契約が必要ないと想定している場合 | |
労働契約書の有無 | 改正労働法 第20条 労働契約の種類
| 業務委託など |
社会保険 | 義務あり(月14日の例外あり) | なし |
個人所得税 | 原則として、累進課税で計算 例外(3ヶ月以内や2,000,000未満) | 10%の源泉徴収+個人の確定申告 |
お役にたてると幸いです!