こんにちはマナボックスの菅野です。
今日は『社長・法定代表者のあなたがベトナムを不在にする時の委任について』というテーマでお伝えします。
- 社長であり法定代表者であるあなたがベトナムを不在にした場合の委任の具体的な意味
- 誰が「委任」できるのか?知りたい
- 「委任」できる範囲を知りたい
- 委任した人の行動による責任を誰がとるのか?
このような悩みを解決できます。なお日系企業のほとんどは有限会社でありますのでそちらを前提に解決していきます。なお社長のことをベトナムではGDと呼びます。
ベトナムで2009年から日系企業を中心に述べ300社以上の会社を法律的及び実務的な視点で問題解決を支援してきた法律の専門家のリー氏に伺いました。
誰が?その権限を委任できるのか?責任は?
- 誰が?「委任」することが可能ですか?
「法定代表者」が書面によって委任することが可能です。
以下で委任状の雛形集を閲覧することが可能です(越・英・日)
>>M-Lab_法的代表者が不在時の時の「委任状」について【テンプレート】
以下はベトナム企業法の引用分です。企業法のオリジナルの文言を見ると「法定代表者」が委任できると記載されています。
第12条 企業の法定代表者
3.企業は,少なくとも一人のベトナムに居住する法定代表者を常時確保しなければならない。一人の法定代表者だけがベトナムに居住する場合,その者はベトナムから出国するときは,法定代表者の権限の行使及び義務の履行を他の個人に対して書面により委任しなければならない。この場合において,法定代表者は引き続き委任した権限の行使及び義務の履行につき責任を負う。
- なぜ、有限会社の場合の「所有者」でない「法定代表者」が委任できるのですか?
あくまで短期的な場合のみに限定しています。また、責任は委任した「法定代表者」が引き続き負います。
以下企業法の関連条文の引用です。定款についても定める権限があるというところがポイントです。
■1人会社、第 76 条 会社所有者の権利
1.組織である会社所有者は,以下の権利を有する。
a) 会社の定款の内容を決定し,会社の定款を修正,補充する。
c) 会社の管理組織機構を決定し,会社の管理者,監査役を任命,免任,罷免する。
■2人以上会社
第 55 条 社員総会 2.社員総会は,以下の各権限及び義務を有する。
đ) 社員総会の会長の選任,免任,罷免。社長又は総社長,会計部門の長,監査役及び会社の定款に定めるその他の管理者の任命,免任,罷免,契約の締結及び終了を決定する。
k) 会社の定款を修正,補充する。
「社長」と「法定代表者」の違いと選任の方法
- 「社長」と「法定代表者の違い」はなんでしょうか?
対内的にビジネスを進めるのが「社長」、対外的な会社の顔となるのが「法定代表者」
ベトナム企業法の特徴としていわゆる経営を進める「社長」「総社長」と「法定代表者」を分類しています。こちらについては以下で詳しく解説しています。
>>【ベトナム会社法を学ぼう!】社長と総社長の違いと「法定代表者」との関係
要するに
- 「社長」→対内的(経営を進める)
- 「法定代表者」→対外的(対外的な契約、訴訟)
日本では、代表取締役が「社長」「法定代表者」を兼ねていると言っていいでしょう。
実務的には「社長」が「法定代表者」を兼ねることが多いです。こちら自然だからだと思います。ただ、別々に設定している場合もあります。
- 有限会社の「法定代表者」はどのように決めるのですか?
原則は所有者である「会長」。定款で別段の定めで「法定代表者」を決定することができる。
ただ、実務上は「社長」を法定代表者とすることが多いです。
以下は引用条文です。
■1人有限会社
第 79 条組織が所有する一人社員有限責任会社の管理組織機構
3 会社は,社員総会の会長,会社の会長,社長又は総社長の職名を持つ法定代表者を少なくとも一人有さなければならない。会社の定款に規定がない場合,社員総会の会長又は会社の会長が会社の法定代表者となる。
■2人以上有限会社
54 条 会社の管理組織機構 会社は,社員総会の会長,社長又は総社長の職名を持つ法定代表者を少なくとも一人有さなければならない。会社の定款が規定しない場合,社員総会の会長が会社の法定代表者となる。
■株式会社
第137条 株式会社の管理組織機構
2.会社に法定代表者が一人しかいない場合,取締役会の会長又は社長若しくは総社長が会社の法定代表者となる。定款に規定がない場合,取締役会の会長が会社の法定代表者となる。
委任できる範囲について教えてください。
続いてどのような業務を委任できるか?です。
- どのような業務について委任できますか?
原則として企業法が想定する「法定代表者の権限」ただ、委任する範囲については、委任状で限定することも可能。しかし、ベトナム当局への提出書類などについては、たとえ委任状があったとしても、絶対にもともとの「法定代表者」のサインでなければ認めないと指摘されることもあり。
本日のまとめ
本日は社長がベトナムを不在にする時の「委任」について解説させて頂きました。
- 一時的な委任の場合は所有者でなく「法定代表者」が委任できる
- 責任は引き続き委任した「法定代表者」が負う
- 「法定代表者」と「社長」は異なる立場であるが実務上同じであることが多い
ただ、現在のようなテクノロジーが発展した世の中では、実務上においてベトナムにいなくても経営ができますし郵送すれば署名も可能です。法律が設定された時代ではこのようなオンラインで「どこでも」業務できる状況を想定していなかったのかもしれません。
実際の実務でも30日超ベトナムを不在にして業務がまわることは一般的です。
あなたの会社がベトナム企業法を理解してビジネスでいい結果を残せることを祈っていますね。