こんにちは、マナボックスの菅野です。

この記事はこんな人のために書いています。
  • ベトナムで移転価格制度という言葉が気になっている。
  • どのような場合に移転価格文書を作成しないといけないのか?わからない。不安。
  • 移転価格制度の追徴課税が怖い。気になる。

これについて解説していきます。

こんにちは、グローバル経営管理アドバイザーの菅野(すげの)です。移転価格文書って、聞いたことありますか?居酒屋の会話の出てくるかもしれません。

とっても大事です。なぜならば、最近移転価格税制の指摘(いいがかり?)が増加傾向にあるからです。

でも、正直、作成のためのコンサル代についてお金もかかるし、分厚い資料を作成しないといけないので大変です。

この免除規定ですが、ちょっと混乱する場合もあるので整理していきますね。ちなみに、移転価格ってなに?って方については以下で解説しています。

>>中学生でもわかる移転価格制度の仕組み 徹底解説!

どんな場合にベトナム、移転価格文書を作成しなくていいの?

ベトナムにおいて移転価格文書の免除、つまり、作成しなくていいよ!が認められるのは、以下の3つの条件を1つでも満たす場合です。

①売上高が500億VND(2.5億)かつ、関連当事者取引300臆VND(1.5億)未満であること。

②売上高が2,000億VND未満(10億円)未満かつ単純な機能を有し、無形資産の開発や使用による収益の計上や費用の発生がなく、純売上高に対する利払前・税引前の営業利益(EBIT)に対する割合(営業利益率という理解)が以下の一定率を上回る場合:

  • 販売業5%
  • 製造業10%
  • 加工業15%

③事前確認制度(APA制度)を締結している場合で、合意書に関する年次報告書を提出している事。

菅野 智洋
菅野 智洋
ちょっとややこしいですよね。砕いた表現で、わかりやすく説明すると以下のように理解できると思います。

 

①「金額的に大きくなければ、まあ作成しなくもていいよ。」

②「ベトナムで十分な利益を出しているなら、そもそも移転価格の問題ないからいいよ。」

③「事前に認められているのならいいよ。」

APAとは、税務当局と納税者の間、または、税務当局と納税者およびベトナムが租税条約を締結している国・地域の税務当局との間で、一定の期間を対象にして、課税標準、移転価格算定方法、または、独立企業間価格を具体的に確認する文書による合意です。

つまり、事前に関連当事者との間での仕入・販売価格について税務当局と合意しているのであれば、問題ないですよ。という決まりです。

 

菅野 智洋
菅野 智洋
とこんな感じですかね。

原文も見てみましょうか?No. 20/2017/ND-CPという規定に記載されています。

 

Article 11. Safe harbor for transfer pricing documentation

  1. a) Taxpayer is engaged in the transfer pricing but the total revenue arising within a specified tax period is less than VND 50 billion and the total value of the related-party transactions arising within a specified tax period does not exceed VND 30 billion;
  2. b) Taxpayer already entering into Advance Pricing Agreement (APA) has submitted the annual report in accordance with legislation on Advance Pricing Agreement. For those related party transactions which are not covered by the APA, taxpayers are obliged to comply with the aforesaid transfer pricing documentation requirements referred to in Article 10 hereof;
  3. c) Taxpayer performing business activities by exercising routine functions, neither generating any revenue nor incurring any cost from operation or use of intangible assets, generating sales of less than VND 200 billion, as well as applying the ratio of net operating profit before loan interest and corporate income tax relative to sales revenue, engages in related-party transactions in the following sectors:

– Distribution: At least 5%;

– Manufacturing: At least 10%;

– Toll manufacturing: At least 15%.

 

移転価格の免除について、もう少しわかりやすく整理します!

菅野 智洋
菅野 智洋
もうちょっと深堀します。

思考の順番について、お伝えしますね。

上記の要件は並列的に3つありましたから、ちょっとわかりにくいと言えばわかりにくいです。

以下、フローで解説していきます。

STEP1 関連当事者取引ありますか?

移転価格税制は、趣旨からしてそもそも関連当事者取引でしか論点になりません。こればNoであれば、そもそも移転価格文書を作成する必要がありません。

STEP2 APA(事前確認制度)をしてますか?

もし、これで許可をもらっていて、【年次報告書】を提出していれば、移転価格税制文書を作成しなくていいですよね。

STEP3 売上高が約2.5億円未満?かつ関連当事者取引1.5億円未満?

次に金額的な重要性です。これを満たしていれば、移転価格税制文書の作成は必要ありません。

STEP4 売上高が約10億円未満で、営業利益率が高い?

最後にこれを検討します。この要件を満たしていれば、移転価格文書の作成は必要ありません。

まあ、逆に言うと、関連当事者取引が、たった!100円であったとしても、売上高が10億円以上であれば、移転価格文書を作成するという風に読み取れます。これには違和感あります。

フローチャートにすると以下の通りですね。ちょっとわかりやすくなったでしょうか?

 

マナボックスベトナムでは、製造会社の経験のある日本会計士およびベトナム歴9年の専門家、200社以上支援してきたベトナム人会計士が、移転価格税制関連の相談もさせて頂いております。

詳細な質問があれば、問い合わせにより連絡頂ければ幸いです。

>>お問い合わせはこちら!気軽にどうぞ。

その他、移転価格で留意すべき点

菅野 智洋
菅野 智洋
移転価格文書作成の免除の留意点についても共有しますね。

  1. 文書作成義務の免除されたからといって移転価格税制の適用外でない。
  2. 要件②の“単純な機能”には論点あり
  3. 関連者取引には、仕入れ・売上の合計である点
  4. 移転価格文書とは別に、法人所得税申告書の別表を作成しないといけない

1.この免除規定ですが、あくまで、移転価格文書の作成義務の免除です。文書は作成しなくてもいいよ。と言っていますが、関連当事者取引があれば、移転価格の税務調査が全くされないか?と言われば、そこまでは明記していません。

したがって、関連当事者取引がある場合は、やはり気を付けておくべきでしょう。

2.“単純な機能”⇒これって抽象的ですよね。したがって、オフィシャルレターが出されました。税務総局(GDT)は、2017年11月17日にOfficial Letter No.5316/TCTTTRを発行し、「単純な機能」の定義について説明しています。それによれば以下の事を単純な機能って言っています。

  • 戦略的決定を行う機能がない
  • 付加価値の低い取引を行う
  • 在庫リスク及び市場リスクを負わない
  • グループ内の無形資産の開発による収益の計上や費用の発生がない

これでもよくわかりまんけどね。

3.関連当事者取引(例:親子会社間)の金額ですが、これは、仕入れ及び売上の合計であることに留意する必要があります。親会社から仕入れして、ベトナム現地法人で製造し、また日本本社に送付するようなケースです。

仕入100で売上150なら合計で250となります。

4.別表も必要なので忘れずに!

菅野 智洋
菅野 智洋
本日は、移転価格税制の文書の免除規定について解説させて頂きました。

これで整理されたかなと思います。少しでもお役に立てれれば幸いです!