こんにちはマナラボの菅野です。

今日のテーマは『日本で控除された社会保険はベトナムでもやっぱり控除できるでしょう』というテーマでお伝えします。

今日のトピックは以下のような状況の場合を前提としています。

  • 「日本給与は一旦日本の口座に払うけれどもその後、その金額をベトナム法人に請求する場合」

2023年12月29日付けのオフィシャルレター(SumiRiko Vietnam Co., Ltd.に対しての)公式文書番号6002/TCT-DNNCNではなんと

  • 課税所得を計算する時に控除できない」

という結論でした。なお「控除」の意味についてきちんと理解しておく必要があるのであなたがよくわからないという場合は以下のリンク先で学び直しましょう。

>>【図解!】ゼロから理解する 個人所得税の仕組み 日本とベトナムの比較表付き!

以下のリンクでの記事でも述べていますけど「はぁ?そんなことなくない!?」というのが私の率直な意見でした。正直、びっくりというか呆れてしまいましたね。

さらにこのことをベトナム人スタッフが「オフィシャルレターではこうなんで控除できません」と深く疑問も持たずに強く主張する人もいてそれでもショックを受けてしまいました。「もっと深く考えてよ〜」と感じちゃいました。一方でそうでななく「法律的にも理論的にもおかしい。けれどもそれはベトナムで起きてしまう」と教えてくれるベトナム人の専門家もいました。

これを課税所得の計算の際に控除できないと個人所得税が増加してしまうから影響は小さくありません。(控除できないと税率の掛け算のもととなる課税所得が大きくなり税金も増える)

>>社会保険料が個人所得税計算の時に「控除」できないというオフィシャルレター【6002/TCT-DNNCN】

なお、この控除の意味がちょっとわからないなーという人は以下で復習しましょう。

>>【ベトナム税務】ベトナム個人所得税、「控除」には2つの意味がある。

もしこんなことあったらベトナムと外国(日本)の関係が悪くなるし、その結果ベトナムも困るでしょうと感じたんですね。その意見に対抗する形で2024年2月27日付のオフィシャルレター684/TCT-DNNCNが出されました。

海外で控除された社会保険料は「普通に」控除可能だ!

こちらが結論です。

  • 日本などの海外で支払った社会保険料等は課税所得を計算するにあたって控除できる

です。よかった〜! へんな結論のまま実務も進まなくて安心ですね。

オフィシャルレター684/TCT-DNNCNが引用している根拠条文は以下の通り。まあ、条文通りのことを結論して言っているだけなんですけど。

  1. 事業所得、給与および賃金からの所得に対する課税所得は、政令の第7条および第11条に定められた事業所得、給与および賃金からの課税所得に、以下の金額を差し引いたもので決定されます:

a) 社会保険、健康保険、失業保険、および一部の業界や職業で参加が義務付けられている職業責任保険への拠出金、及び自発的退職基金。

自発的退職基金への拠出金は、この項で指定された課税所得から差し引かれる金額が、財務省の指導に従って月額100万VND(年額1200万VND)を超えないものとします;

個人がベトナムに居住しているが海外で働き、海外での事業所得、給与、賃金から所得があり、個人が居住する国の規制に従って強制保険を支払った場合、社会保険、健康保険、失業保険、および強制保険が必要な一部の業界や職業の職業責任保険を支払った従業員は、その保険料を差し引かれます。その保険は、事業所得、給与、賃金からの課税所得を決定する際に課税所得に含まれます。」

引用元:政令第65/2013/ND-CP第6条第1項

また

  1. 保険料および自発的退職基金への控除

a) 保険料には、社会保険、健康保険、失業保険、強制保険が必要な一部の職業の職業責任保険が含まれます

….

c) 外国人はベトナムに居住する個人、ベトナム人は海外で働き、海外での事業所得、給与、賃金から所得があり、個人が居住する国の規制に従って強制保険を支払ったものとしています。ベトナム法の規定に類似する社会保険、健康保険、失業保険、職業責任保険などの強制保険料は、個人所得税を計算する際、事業所得、給与、賃金からの課税所得から控除することができます。

海外で上記の保険料の支払いに参加している外国人およびベトナム人は、年間を通じて税控除のために一時的に所得を控除され(書類がある場合)および規定に従って税務の確定申告を行う個人に対して正式な数値に基づいて計算されます。年間を通じて一時的に控除する書類がない場合は、税務の確定申告時に一括控除が行われます。

引用元:通達No. 111/2013/TT-BTCの第9条第2項

こんな風になっています。

少し気になる「企業内転勤」じゃない場合は?どうなる?

このオフィシャルレターは以下の条文も引用した上で結論づけています。そのポイントは「企業内転勤」です。

「第1条。適用範囲

この政令は、ベトナムで働く外国人従業員に対する強制社会保険に関して、社会保険法および労働安全衛生法を詳細に規定します。

第2条。適用対象

  1. ベトナムで働く外国人従業員は、労働許可証、実務証明書、または有能な権限によって発行された実践ライセンスを持ち、ベトナムの雇用主との間で無期限の労働契約、または1年以上の有期限の労働契約を結んでいる場合、強制社会保険への参加が必要です。

  2. この記事の第1項で指定された従業員は、以下のいずれかの場合に該当する場合、この政令で規定されている通り強制社会保険への参加が必要ありません:

a) 政府の政令No. 11/2016/ND-CPの第1条、第3項の規定による企業内の転勤;…」

  • 政令No. 152/2020/ND-CP(政令No. 11/2016/ND-CPを置き換える)の第1条、第2条および第3条は以下のように定めています:

「第1条。適用範囲

この政令は、以下の労働法の規定に従って、ベトナムで働く外国人労働者およびベトナムで外国の組織や個人のために働くベトナム人労働者の募集および管理を規制します:

第2条。適用対象

  1. ベトナムで働く外国人労働者(以下、外国人労働者と略)は、以下の形式で働く者です:

….

b) 企業内の移動;…

第3条。用語の説明

  1. 企業内で移動する外国人労働者は、外国企業がベトナムの領土内に商業的存在を確立しており、その外国企業が少なくとも12ヶ月連続して以前に雇用していたマネージャー、エグゼクティブディレクター、専門家、および技術労働者であり、企業内でベトナムの商業的存在に一時的に移動する者です。」

引用元:政令第143/2018/ND-CPの第1条および第2条

オフィシャルレターの結論は以下の通りです。

上記の規制に従い、ベトナムに居住している個人である〇〇〇〇さんが企業内の労働者としてベトナムに派遣され、外国の給与および賃金から所得を得て、個人が国籍を持つ国の規制に従って強制保険料を支払っている場合、その保険料はベトナムでの個人所得税の課税所得を決定する際に控除されます。

強制保険料が控除されるという結論は当たり前なのですが、「企業内の労働者として」という文言が気になりますよね。というのは…。

この後の気になる内容はM-Labで解説したいと思います!以下で私の意見を記載しているのでご覧ください!

>>M-lab_日本の社会保険はやっぱり可能だがWPでミスるとどうなる?【684/TCT-DNNCN】